Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

転落王(Príncipe despeñado, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1602年

種類:歴史劇

補足:狩りの途中、ペニャレン(スペイン中東部の地名)の峡谷から弟に突き落とされて殺害されたナバーラ王サンチョ・ガルセス4世を描いたもの。劇中では、サンチョは弟ではなく騎士のひとりに殺されることになっている。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 ナバーラの国王が死去し、宮廷では誰を後継者にするかという問題をめぐって貴族たちが議論する。後継者の候補となっているのは、前国王の親戚にあたるドン・サンチョと、王妃ドニャ・エルビラの胎内にいる前国王の子どもである。

 

 騎士のドン・マルティンはサンチョを支持する。アルバロ・ラインフェルナン・ペラルタがそれに同意する。一方、マルティンの弟であるドン・ラモンは王妃の胎内にいる子どもを支持し、メンド・イニゲスアリスタフォルトゥニオがそれに同意する。

 

 最終的にはサンチョが国王の後継者として認められ、ラモンはナバーラから追放される。ラモンは、自分と対立した兄のマルティンを恨み、彼に「この決定があなたに恥辱をもたらすだろう」と予言して去る。メンド、アリスタ、フォルトゥニオは、それまでの主張を変えてサンチョに従う道を選ぶ。

 

 貴族たちが見守る中、サンチョの戴冠式が行われる。サンチョはマルティンに感謝し、彼を側近にする。そこへ身重のエルビラが現れ、自分の胎内の子どもを差し置いて王位に就いたサンチョや、彼を支持した貴族たちを非難する。

 

 サンチョは邪魔者のエルビラを暗殺しようとする。その意図に気づいたエルビラは王宮から逃亡し、山中へ隠れる。

 

 山中では、羊飼いのダンテオと彼の恋人エリサが喧嘩をしている。エリサの父親ブリセーノは村の司法官である。エリサがブリセーノの意思によって、フィレーノという羊飼いと婚約をしたと聞き、ダンテオは怒る。エリサはダンテオへの愛は変わっていないと告げるが、ダンテオは失望して彼女の元を去る。

 

 ダンテオは、陣痛に苦しんでいるエルビラに出会う。エルビラは彼に「私の名はルシンダです。夫が強盗に殺され、私はそのショックで産気づきました」と嘘を言う。ダンテオは、近くの村に住むドニャ・ブランカに助けを求めることにする。ブランカマルティンの妻である。

 

 村では、ブリセーノから頼まれたブランカが、フィレーノとの結婚を受け入れるようエリサを説得しようとしていた。そこへ、生まれたばかりの赤ん坊を抱いたダンテオが現れ、ルシンダ(エルビラ)が出産したことを告げる。皆はルシンダ(エルビラ)を探しに行くが、彼女の姿は見つからない。(エルビラは、ブランカマルティンの妻であることから、身の危険を感じて逃げ出したのである。)ダンテオは、自分がルシンダ(エルビラ)に恋してしまったことに気づく。

 

 ブランカは、ルシンダ(エルビラ)が残していった赤ん坊の洗礼式を挙げ、自分がその代母となる。ちょうどそこへ、狩りに来ていた国王サンチョが通りかかる。国王はブランカに強く魅かれ、自らも赤ん坊の代父となって、自分と同じサンチョ(子)という名前を赤ん坊につける。ブランカは赤ん坊を宮廷で育てることに決める。

 

 エルビラは山の中で蜂蜜を食べて生きのびていた。そこへ、彼女と同じように宮廷から逃れて山中をさまよっていたラモンが、毛皮をまとった姿で現れる。ラモンはエルビラに忠誠を誓い、二人は山中に身を隠したまま事態を見守る決心をする。

 

 国王は、ブランカを手に入れるために、彼女の夫のマルティンに「ラモンがフランスの助けを借りてナバーラを攻めようとしている」という口実でフランスとの国境へ向かうよう命令し、宮廷から遠ざける。マルティンが自宅を出た後、国王はマルティンの家の門番を買収して家の中に入り、ブランカを凌辱する。

 

 ダンテオはエリサの求愛を拒絶し、ルシンダ(エルビラ)を愛していることを宣言する。エリサが去った後、毛皮をまとったルシンダ(エルビラ)がダンテオの前に現れる。ダンテオは驚きつつも、彼女の子どもがブランカに保護され宮廷で育てられていることを教える。

 

 国境から戻ってきたマルティンは、ブランカの口から、彼女が国王に凌辱されたことを聞かされる。ブランカは夫の前で短剣で自害しようとするが、マルティンはそれを阻止し、ブランカは気を失って倒れる。

 

 国王は、寵臣のマルティンの妻を寝取ったことを後悔し始める。そこへマルティンが現れ、ラモンの軍の攻撃はなかったことを王に告げ、ブランカと国王の間に起きたことについて知っていることを暗にほのめかす。国王はマルティンに高い地位を与えて自分の過ちをごまかそうとする。

 

 弟のラモンが予言した通り、王によって恥辱を与えられるという結果を招いたマルティンは、ブランカとともにしばらく村で暮らすと王に告げる。

 

 落胆している国王を慰めるため、ペラルタとフォルトゥニオは、「ペニャレンの山中で、人のような姿をした奇妙な生き物が2匹(ラモンとエルビラのこと)、目撃されているそうです」と国王に話す。その話に興味を抱いた国王は、それらの生き物を捕えようと決心する。

 

 悲しみとともに村へ戻ってきたブランカを見て、フィレーノとエリサは彼女を慰める。

 

 一方、マルティンは、森の中で毛皮をまとったラモンに遭遇する。両者は激しく戦い、やがてマルティンは相手が弟のラモンであることに気づく。

 

 マルティンはラモンに、妻のブランカが国王に凌辱されたことを話し、「あの小さな赤ん坊のサンチョの洗礼式が災いの始まりだったのだ。私は怒りの余り、サンチョを谷に置き去りにするよう従者たちに命じた」と告白する。

 

 その時、国王がラモンとエルビラを探して森の中に現れる。マルティンは、ラモンを追跡しているふりをして、国王をペニャレンの岩山の上におびき出す。マルティンは国王を岩山の上からつき落として殺害する。

 

 マルティンの従者たちは、子どものサンチョを谷に置き去りにしようとするが、毛皮をまとったエルビラの姿を見て恐ろしさのあまり逃げ出す。エルビラは、サンチョを自分の息子だとは気づかずに、抱き上げて保護する。

 

 フォルトゥニオ、アリスタ、メンド、ペラルタが、国王の遺体を担いで登場する。マルティン、ラモン、ブランカはそれを見る。ラモンはブランカを慰め、彼女は恥辱を受けたわけではないのだと告げる。

 

 皆の前にエルビラが、サンチョを抱いて現れる。皆は国王が死んだこと、エルビラが抱いている子どもこそが彼女の息子なのだということを彼女に教える。貴族たちが子どものサンチョを新しい国王として迎え入れる場面で幕となる。