ロペへの帰属:確実
執筆年代:1603年
種類:歴史劇
補足:伝説的な人物であるペドロ・カルボネロを題材として書かれたもの。レコンキスタにおいて壮絶な死を遂げたキリスト教徒が主人公であるが、キリスト教徒とイスラム教徒との間に結ばれた友情も描いている。
参照元:ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega
舞台は15世紀末、スペインのレコンキスタ(国土回復戦争)が終了する数年前のグラナダ近郊である。コルドバ出身の勇敢な戦士ペドロ・カルボネロが率いるグループは、キリストの12使徒からとった名前をもつ12人と、陽気なモーロ人のアメーテによって構成されており、その名声はアラゴン国王フェルナンドの耳にも届いている。
キリスト教徒たちは、「モーロ人たちと交渉して、捕虜になっている家族を救い出してほしい」とペドロに頼み、身代金を差し出す。義侠心にあふれたペドロは、困窮しているキリスト教徒からは身代金を受け取らない。
ペドロの仲間のタデオは、モーロ人たちの社会では名家であるベンセラーヘ(あるいはアベンセラーヘ)家の一員になりすまし、アメーテとともに変装してグラナダに潜入する。彼らは、モーロ人の王アルマンソールの寵臣、セルビン・ベンセラーヘの存在を知る。ペドロは、セルビンと友好関係を結び、捕虜を救い出すための交渉をしようと考える。
タデオとアメーテはまた、アルマンソールが聖ヨハネ祭(イスラム教徒にとっても重要な祭日)を豪華に祝う計画を立てていることを知る。ペドロの仲間たちは、祭りの賑わいを利用してキリスト教徒の捕虜たちを逃がそうと考える。
モーロ人のサラシーノとアルモラディは、フィダウラとダリーファという女性に求愛するが、「ベンセラーヘ家の血筋ではないから」という理由で拒絶されてしまう。二人はベンセラーヘ家の出身であるセルビンを妬み、彼を陥れようと企む。
モーロ人に変装してグラナダに潜入したペドロは、ロセーラというキリスト教徒の捕虜の女性に出会い、二人は恋に落ちる。
タデオはセルビンをペドロに紹介する。ペドロとセルビンはすぐに親しい友人となる。
サラシーノとアルモラディは、タデオがベンセラーヘ家の一員であると偽っていることを利用し、タデオがアルマンソールの暗殺を計画しているように偽装する。彼らはアルマンソールに、ベンセラーヘ家が王位をのっとろうとしていると嘘を言う。激怒したアルマンソールはベンセラーヘ家の一族を皆殺しにするよう命じる。
夜中にロセーラと待ち合わせて一緒に逃亡しようとしていたペドロは、セルビンがアルモラディに捕らえられているのを目撃する。セルビンから事情を聞いたペドロはロセーラを先に逃がしてから、モーロ人たちを撃退してセルビンを救出する。
ペドロとセルビンはアルバイシン地区へ逃げ、そこでペドロの仲間たちやロセーラと合流する。彼らは変装してグラナダを脱出することにする。セルビンは、恋人のフィダウラに宛てた手紙を書き、アメーテがそれをフィダウラに届ける。フィダウラはセルビンへの返事をアメーテに渡す。
ベンセラーヘ家の一族は、アルマンソールの命令によって粛清される。その中の一人は王妃の愛人であったとされ、王は王妃を幽閉する。しかしアルマンソールは、セルビンが逃亡したことに気づき、立腹する。王は、ベンセラーヘ家のために嘆くことを人々に禁じる。
ペドロたちはグラナダを脱出し、山中に逃げる。ロセーラは男装している。ペドロは、自分たちがモーロ人と取引をしてキリスト教徒の捕虜たちを解放していることをロセーラとセルビンに説明する。ペドロを愛しているロセーラは、彼の傍にとどまることを決心する。アメーテがやってきて、セルビンにフィダウラの手紙を渡す。
キリスト教徒たちの軍勢がグラナダを脅かしていることを察知したアルマンソールは、市民に戦闘の準備を命じる。しかしベンセラーヘ一族を滅ぼしたことによって、グラナダの軍事力は低下していた。
アルモラディの従者アリは、主人のアルモラディとサラシーノが嘘をついてベンセラーヘ一族を滅ぼしたことをアルマンソールに告白する。アルマンソールは、アルモラディとサラシーノを死刑にし、生き残ったベンセラーヘ家の者に名誉を回復させると宣言する。
セルビンは、フィダウラに会うためにグラナダに潜入する。アルマンソールがベンセラーヘ家の名誉回復を宣言したことを知った彼は、自ら王の前に姿を表す。アルマンソールはセルビンの名誉を回復させ、フィダウラとの結婚を許可する。
ペドロはモーロ人の兵士たちを捕らえる。しかし指揮官のスレーマはペドロの手から逃れ、アルマンソールの元へ報告に行く。グラナダを脅かしているのが、アラゴン王のフェルナンドではなく民兵のペドロ・カルボネロだと知ったアルマンソールは、セルビンに彼らを捕らえるよう命じる。
セルビンはペドロを助けるため、ひそかに彼に手紙を送ろうとする。しかし手紙を託された使者はキリスト教徒たちを見て怯えて逃げてしまい、手紙はペドロの元に届かない。
ペドロはロセーラとの結婚を決意する。同時に彼は王のフェルナンドから司令官の称号を与えられる。ペドロはアラゴンの王宮へ向かうが、セルビンの率いるモーロ人たちに妨害される。
セルビンはペドロに降伏を求めるが、ペドロはセルビンを裏切り者とののしる。セルビンは「きみに逃亡を勧める手紙を送った」と告げる。
ペドロはセルビンが彼への友情を捨てたわけではないことを悟る。セルビンは最後の手段として、ペドロにイスラム教への改宗を勧め、改宗すれば富と権力を約束すると告げる。しかしペドロは改宗を拒否し、戦うことを選ぶ。キリスト教に改宗していたアメーテもペドロの元にとどまる。
ペドロとその仲間たちはモーロ人たちと最後まで勇敢に戦い、全員が戦死する。セルビンたちはペドロの戦いぶりを賞賛し、彼のために墓を建てることを決心する。