ロペへの帰属:確実
執筆年代:1599-1603年
種類:文学に基づく劇
補足:シャルルマーニュ伝説をもとにして書かれた作品。主人公ロルダン(フランス語ではローラン、イタリア語ではオルランドとなる)は『ローランの歌』『狂えるオルランド』などの文学作品に登場する騎士。
参照元:ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega
*人物名表記は基本的にスペイン語の読みにならう。
フランスのパリで、 皇帝(シャルルマーニュ)の娘である皇女の婚約と、皇太子カルロスの息子の誕生を祝う宴の準備が行われる。皇女の婚約者であるハンガリー王子が到着する。
しかし皇女は、すでにアルナルド伯爵とひそかに結婚し、彼の子どもを身ごもっていた。アルナルドはドイツ人で、皇帝に仕える廷臣の一人である。
皇女は皇帝に結婚の延期を願い出た後、アルナルドに手紙を書く。「出産が近づいているので、宮殿を脱け出します。今夜、庭園へ迎えに来てください」
その夜、皇女とアルナルドは庭園で落ち合い、宮殿から脱出しようとする。しかし折悪しく、そこへ皇太子とハンガリー王子、その他の貴族たちや解放された捕虜、警吏たちなどが通りかかる。アルナルドの従者セリオは予期せぬ事態に直面し、主人の馬をつれて逃げ出す。
皇女は陣痛に苦しみ始める。皇太子とハンガリー王子は「その女性は誰か」とアルナルドに尋ねる。アルナルドは「私の秘密の恋人で、既婚者の女性なのです。これから彼女の家へ送り届けるところです」とごまかす。ハンガリー王子は親切心から、自分の馬をアルナルドに提供する。
その後、祝宴の場に到着した皇太子とハンガリー王子は、皇女がいなくなったという知らせを受け取る。ハンガリー王子は、皇女がアルナルドとともに自分をだまして脱出したのだということを知る。
アルナルドは皇女をつれて山奥へ身を隠す。彼らはそこでセリオに再会する。皇女は男の赤ん坊を出産する。赤ん坊は生まれるやいなや、丘を転がり落ちて(rodar=転がる)川の前でようやく止まる。アルナルドはそのことにちなんで、赤ん坊を「ロルダン」と名付ける。アルナルドとセリオは山の中に小屋を建て、皇女と赤ん坊とともにそこに住む。
その数年後、アルナルドはモーロ人との戦いのため皇帝の軍隊に加わる。皇女はフレリダと名乗って刺繍をしながら生活費を稼ぎ、息子のロルダンとともにパリ近郊のビリャレアル村で暮らす。
ロルダンは気性の激しい青年に成長する。彼は、父親が誰かわからないという自分の境遇に不満を抱く。ある日、村人から「売春婦の息子(Hijo de la puta)」と呼ばれたロルダンは相手に暴力をふるい、フレリダ(皇女)からもっと謙虚になるよう諭される。
ロルダンは、自分が高貴な人物の血を引いているのではないかと思うようになり、想像に基づいて自分の父親の肖像画を描く。
ビリャレアル村の青年たちは、隣のビリャフロール村の青年たちと対立する。ビリャレアル村の青年たちは、ロルダンを自分たちの指導者にしようとするが、フレリダ(皇女)とロルダンは難色を示す。
しかし、ビリャフロール村の青年たちがビリャレアル村で乱暴狼藉をはたらき、さらにフレリダ(皇女)を捕虜にするに至って、ロルダンは戦いに身を投じる。彼はビリャフロール村の青年3人を殺す。
ロルダンは裁きの手を逃れるため、母とともに村を去ってパリへ向かう。道中、フレリダ(皇女)は自分が皇女であることをロルダンに告白する。さらに彼女は、ロルダンの父のアルナルドがモーロ人の捕虜となっていることを彼に教える。
皇女はパリの城門までロルダンに付き添った後、彼と別れる。
宮殿では、皇太子カルロスが、息子のカルロートをナバーラの王女と結婚させようとしていた。ロルダンは、父を救い出すための手段として皇帝に近づく。ロルダンを気に入った皇帝は、彼を廷臣にする。
ナバーラ国王の使者として、スペイン人フアン・デ・グスマンが宮殿にやってくる。ロルダンに会ったフアンは、彼の傲慢で自由奔放な性格を見て、スペインの若きベルナルド・デル・カルピオとよく似ていると感じる。彼の話を聞いたロルダンは、いつかベルナルドに会いたいと望む。
アルナルドはセリオとともにモーロ人たちから解放され、妻と息子に会おうとビリャレアル村へ行く。しかし彼は村人から、フレリダ(皇女)とロルダンが村を去ったことを知らされる。
ロルダンはドニャ・アルダに恋をしている。彼はカルロートとともにアルダを口説く。アルダは「主人としてはカルロートを愛し、夫としてはロルダンを愛します」と答える。
アルナルドは宮殿へ行き、息子のロルダンに会う。二人は互いに親子であることを悟り、アルナルドは自分がモーロ人から解放されたことをロルダンに話す。ロルダンは、母が困窮していることを父から聞く。
ロルダンは皇帝から食事に招かれる。ロルダンは母に与えるための食べ物を食卓から持ち出す。
残飯を食べようとやってきた貧者たちの一人が、アルナルドをスパイだと訴える。皇帝は彼を尋問することにする。同時に、ロルダンが食べ物を与えていた女性(皇女)も皇帝の前に引き出される。
皇帝は、皆が見守る中で皇女に再会する。ロルダンは剣を抜き、母を守ろうとする。皇女は皇帝に、自分がアルナルドに恋をしたこと、アルナルドは常に誠実な夫であり父親であったこと、彼がモーロ人の捕虜になったことなどを語る。皇帝は娘とアルナルドを正統な夫婦として認める。
アルナルドもその場で自分の正体を明かし、皇帝は彼にオルレアン公の位を与える。カルロートとナバーラの王女、ロルダンとアルダの結婚が宣言されて幕となる。