Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

己の不幸を望む(Querer la propia desdicha)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1619年

種類:歴史劇

補足:友人のクラウディオ・コンデに捧げられている。アルフォンソ10世と推定される国王が登場するが、歴史的な要素はほとんど見られない。トレドが舞台となる。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 カスティーリャアラゴンは、王家どうしの政略結婚によって両国の友好関係を結ぼうとしている。カスティーリャの貴族ドン・フアン・デ・カルドナは大使としてアラゴンへ赴き、政略結婚について交渉する。

 

 カスティーリャへ帰国したフアンは、カスティーリャ国王アルフォンソに、交渉が成功しつつある状況を報告する。国王は満足し、彼に高い地位と報酬を与えると約束する。

 

 フアンは恋人のドニャ・アンヘラに再会し、愛情のこもった会話を交わす。

 

 貴族のドン・ヌーニョは、かなう見込みがないと知りながらもアンヘラをひそかに愛している。彼はアンヘラに向かって、フアンの長所や高い地位、財産を賞賛しつつ、見返りを求めずにこれまでのように彼女を愛し続けることを許してほしいと語る。

 

 その後、フアンに会ったアンヘラは、彼がヌーニョに嫉妬して不機嫌になっているのを見る。アンヘラは、フアンが高い地位と収入を得たことによって以前のような謙虚さを失ってしまうのではないかと心配する。しかし彼女は気を取り直してフアンに指輪とリボンを贈り、その夜に彼と会う約束を交わす。

 

 二人が話しているのを見た国王は、フアンが独りになったところで、アンヘラについて彼にいろいろな質問をする。フアンは、国王がアンヘラに恋をしているのではないかと警戒する。しかし国王は「実は私はアンヘラの従妹のドニャ・イネスに恋をしているのだ。しかし彼女は私の気もちに応えてくれない。きみに私と彼女との仲をとりもってほしい」と説明してフアンを安心させる。

 

 フアンはイネスに会い、国王の気もちに応えるよう彼女を説得しようとする。しかしイネスはフアンに恋をしており、彼のそのような態度を見て不機嫌になる。

 

 フアンとイネスが会っているのを見たアンヘラは、二人の仲を誤解する。フアンが独りになったところで、アンヘラはフアンをつかまえて彼を非難する。

 

 自分のせいでフアンとアンヘラの仲が険悪になってしまったことを知った国王は責任を感じ、「アンヘラに真実を話すように」とフアンに告げる。しかしフアンは国王に恥をかかせてはならないと考え、「実は国王陛下の名のもとにヌーニョとイネスを結婚させるための交渉をしていたのだ」とアンヘラに嘘をつく。国王はフアンの思いやりと機転に感心する。

 

 フアンの従者であるテーリョは、国王の前で気の利いた冗談を言い、国王を楽しませる。しかし彼は冗談の中で、君主が孤独であるという事実をほのめかす。

 

 アンヘラはフアンの言葉を聞いても、嫉妬から逃れられずに悩む。そこへヌーニョが現れ、彼女に声をかける。アンヘラは「イネスと結婚しようとしているにもかかわらず、私に近づこうとするなんて」と彼を非難する。ヌーニョは驚く。

 

 ヌーニョは、国王が自分をイネスと結婚させようとしているのだと信じ込み、イネスに話しかける。しかし結婚の話など聞いていないイネスは彼を冷たくあしらう。ヌーニョは落胆する。

 

 国王は、フアンにまだ具体的な爵位と領地を与えていなかったことをテーリョから知らされ、「ビリャヌエバ伯」および「アレバロ公」の爵位をフアンに与える。フアンは喜ぶが、「謙虚さを失わないように」というテーリョの賢明な忠告にも耳を傾ける。

 

 フアンが爵位を与えられたことを知ったイネスは彼を抱擁して祝福する。しかしアンヘラは彼から距離を置く。

 

 フアンは、アンヘラとの結婚の許可を国王に願い出る。国王は承知し、アンヘラの意思を確かめる。するとアンヘラは「フアンが今よりも貧しかった時は私は彼を愛していました。でも彼が裕福で高い地位を得た今、もう彼を愛してはいません。私はアラゴンへ去ろうと思います。フアンを誰かと結婚させたいなら、イネスと結婚させてください。彼女は彼を愛していますから」と答える。

 

 アンヘラの意思を知ったフアンは嘆き、自分に与えられた爵位を捨てて元の状態に戻ろうと決心する。彼は愛するアンヘラがいなければ生きていけないと考え、「愛は私に、己の不幸を望むよう命ずるのだ」とつぶやく。

 

 フアンを愛するイネスは、国王に「フアンに、私と結婚するよう働きかけてください」と懇願する。イネスに恋している国王はそれを渋り、「他の男性になら、それをしてもよい」と答える。

 

 一方、ヌーニョも国王に「イネスと結婚させてください」と懇願する。国王は彼に「彼女にはすでに愛する男性がいる」と言ってあきらめさせようとする。

 

 ヌーニョは、その男性とはフアンのことではないかと疑い、フアンに会ってそれを確かめようとする。フアンは「自分はイネスに恋してはいない。きみがイネスを愛するのは自由だ」と答える。

 

 フアンは、国王が自分の爵位を剥奪することを望み、自ら国王に嫌われようと試みる。しかし国王はフアンに恩恵を与えることをやめようとせず、カラトラバ(ラ・マンチャ地方の都市)の城代職まで与える。

 

 フアンはついに、グラナダのモーロ人にカラトラバを譲るという偽の手紙を書いてそれを国王に見つけさせ、自分を罰してもらおうと考える。主人の愚かな企てを察知したテーリョは、先回りしてフアンの計画を国王に教える。

 

 国王からフアンの計画を知らされたアンヘラは、自分のせいでフアンが命を失いかねないような愚かな企てをするに至ったのだと思い、涙ながらに国王に「私と彼を結婚させてください」と懇願する。

 

 フアンは計画を実行に移す。偽の手紙を読んだ国王はフアンから全ての爵位と財産を剥奪する。彼の従者であるテーリョも財産を取り上げられてしまう。

 

 フアンはアンヘラに会い、「今ほど自分が正気であったことはない」と告げる。彼は彼女のために、自分の最大の宝である名誉さえも捨てたのだと語り、もしそれでも彼女に愛してもらえないのなら、トレドの山中で死ぬことを選ぶと宣言する。

 

 アンヘラは、愛が何よりも勝るものであるとフアンに語り、彼の愛を受け入れる。彼女は自分の所有財産で二人が生活するには十分であると説明し、だからといって自分は彼を支配しようとは考えていないとフアンに告げる。

 

 アンヘラが地位と財産を失ったフアンに愛情を示したのに対し、イネスは逆にフアンへの愛情を失ってしまう。国王は、二人の女性の違いを目のあたりにする。

 

 国王とアラゴン王女との結婚式がメディナセリで行われるという知らせが、ヌーニョによってもたらされる。

 

 国王は、フアンから奪った全ての爵位と財産をアンヘラに与え、フアンとアンヘラを結婚させる。イネスはヌーニョと結ばれる。テーリョにはカラトラバの城代職が与えられる。

 

「己の不幸を望む」という名の劇の終了が告げられるとともに、「作者はそう望んではいない」ことが告げられて幕となる。