Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

モラーニャの牛飼い(Vaquero de Moraña, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1599-1603年

種類:歴史劇

補足:8世紀末、アストゥリアス王ベルムード1世治世下のスペインが舞台となる。モラーニャはガリシア地方の街もしくは村と思われる。本作はおそらく、当時大衆の間で広く知られていた詩「モラーニャの牛飼いアントンのコプラ集」と関わりがあると考えられている。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 サルダーニャ伯爵ドン・マンリーケは、レオン国王ベルムードの妹ドニャ・エルビラと愛し合っている。しかしベルムードはエルビラとカスティーリャ伯爵との結婚を一方的に決めてしまう。マンリーケはひそかにエルビラと出奔しようとするが、見つかって国王に捕らえられる。

 

 マンリーケはエルビラへの愛を表明して弁明するが、国王はエルビラを修道院に送ってしまう。マンリーケは投獄される。

 

 マンリーケの従兄のドン・フアンは、パンの中に手紙を隠して牢獄の中のマンリーケに送る。手紙には「国王はきみの処刑を言い渡した。きみはそこから脱出すべきだ。私が送ったワインを衛兵たちに飲ませるといい。そのワインは正気を失わせる効果があるのだ」と書かれていた。

 

 マンリーケは衛兵たちにワインを飲ませて正気を失わせ、牢獄から脱出する。エルビラもまた、修道院から逃げ出す。それらの知らせを聞いた国王は激怒し、彼らの追跡を命じる。

 

 モラーニャの地では、羊飼いのアルシーノルシンダティレーノらが方言を使って語らっている。彼らの領主ドン・フェルナンドもモラーニャに滞在している。フェルナンドはアビラに住んでいたのだが、サラマンカ大学の学生である息子のドン・フェリックスが妹のドニャ・アナに求婚しようとした軍人フェリサルド(もしくはリサルド)と諍いを起こして相手を傷つけてしまったため、息子と娘をつれてアビラを去り、おだやかなこの地で夏を過ごすことにしたのであった。

 

 修道院から逃げてきたエルビラは、モラーニャの地にやってくる。一人の兵士が野原でエルビラを凌辱しようとしたため、それを目撃したフェリックスは兵士を殺害する。羊飼いたちは兵士の死体を崖の下に投げ捨てる。

 

 エルビラは、助けてくれたフェリックスとその家族に、自分はレオンの農家の娘でマリーナという名だと告げる。さらにエルビラは「私は継母によってむりやりカスティーリャ修道院に入れられそうになったので逃げてきました。どうかあなた方の家の使用人として雇ってください」と彼らに頼む。フェルナンドはマリーナ(エルビラ)を雇うことにする。フェリックスはマリーナ(エルビラ)に魅了される。

 

 一方、マンリーケとフアンも、農夫に変装してモラーニャにやってくる。彼らは偶然ティレーノに会い、彼からその土地の情報を聞く。

 

 アナに求婚したフェリサルドも、フェリックスに復讐するために変装し、一人の警吏を味方につけてモラーニャにやってくる。

 

 フェリックスはマリーナ(エルビラ)に強引に求愛するが、マリーナ(エルビラ)はそれを拒絶する。

 

 フェリックスはフェリサルドと警吏に襲われるが、農夫に変装したマンリーケとフアンに助けられる。マンリーケはアントン、フアンはペドロと名乗る。

 

 フェルナンドはアントン(マンリーケ)とペドロ(フアン)に感謝する。二人はフェルナンドの家で、収穫人として雇われることになる。ペドロ(フアン)はアナに恋をする。

 

 マリーナ(エルビラ)とアントン(マンリーケ)は互いを見て、恋人に似ていると感じるが、自身の正体が周囲に露見することを恐れ、互いに偽りの姿を装い続ける。

 

 ペドロ(フアン)はアナに求愛する。しかしアナはアントン(マンリーケ)に恋をしており、彼が本当は高貴な人物なのではないかと疑っている。ペドロ(フアン)はアナの疑念に対し、「私たちはただの収穫人です」としらを切りとおす。

 

 高齢のフェルナンドまでも、マリーナ(エルビラ)に欲望を抱き、こっぴどく拒絶される。フェルナンドは娘のアナに「マリーナ(エルビラ)をティレーノと結婚させ、私の領地の一部を与えるつもりだと、彼女に伝えてくれ」と頼む。

 

 フェルナンドは、フェリックスが恋愛詩を読んでいるのを見とがめ、不真面目だと非難して詩の本を取り上げる。フェリックスは煩悶し、マリーナ(エルビラ)を見つけて激しく求愛するが、マリーナ(エルビラ)はフライパンを振り上げて彼を拒絶する。

 

 フェリックスが去った後、アナがマリーナ(エルビラ)の前に現れ、「私とアントン(マンリーケ)との仲をあなたに取り持ってほしい。そして、私の父の勧めに従って、あなたはティレーノと結婚してほしい」と言う。怒ったマリーナ(エルビラ)は、再びフライパンを振り上げて彼女の要求を拒絶する。

 

 収穫人たち穀物の収穫を祝い、皆で集まって歌を歌う。アントン(マンリーケ)はフェルナンドに詩を捧げ、豊作を祈願する。フェルナンドはアントン(マンリーケ)の仕事ぶりをほめ、彼を「モラーニャの牛飼い」に任命して領地にそのまま残ってほしいと告げる。

 

 フェルナンドはティレーノに、マリーナ(エルビラ)との結婚を勧める。ティレーノは恋人のルシンダがいるにもかかわらず、喜んでそれを受け入れる。

 

 アントン(マンリーケ)が物思いにふけっていると、マリーナ(エルビラ)がやってくる。二人は会話を交わすうちに互いの正体に気づく。

 

 アントン(マンリーケ)とマリーナ(エルビラ)は愛の言葉を交わして抱き合うが、そこへアナが現れたので二人は離れる。アナはアントン(マンリーケ)に自分を抱擁するよう命じ、嫉妬したマリーナ(エルビラ)は邪魔をする。続いてフェリックスが現れてマリーナ(エルビラ)に接近し、今度はアントン(マンリーケ)が嫉妬する。

 

 アナとフェリックスが去った後、アントン(マンリーケ)とマリーナ(エルビラ)は互いを非難する。しかしフアンが現れて、二人を仲直りさせる。

 

 アントン(マンリーケ)とマリーナ(エルビラ)が再び抱き合うと、今度はフェルナンドが現れる。二人はその場を取り繕うため、自分たちは縁戚関係にあるのだと嘘の説明をする。

 

 マリーナ(エルビラ)は、身を守るための手段として、フェルナンドには「私はフェリックス様の子どもを妊娠しています」と言い、フェリックスには「フェルナンド様の子どもを妊娠しています」と言う。ティレーノはマリーナ(エルビラ)が妊娠しているとフェリックスから聞かされて激怒し、フェルナンドに文句を言う。フェルナンドとフェリックスはお互いを非難し合う。

 

 国王ベルムードは、マンリーケとエルビラが、当時モーロ人の領土であったトレドに逃げたのではないかと考える。国王はトレドに攻め入るため、エルビラの婚約者であるカスティーリャ伯爵に支援を要請する。伯爵はそれを受け入れ、両者はアビラで落ち合うことにする。

 

 フェリサルドが、兵士となる人材を集めるためにモラーニャにやってくる。

 

 息子のフェリックスを軍隊に取られたくないフェルナンドは、彼に聖職者になるよう勧めるが、フェリックスはそれを嫌がる。

 

 フェリサルドはフェリックスを差し出さないフェルナンドを非難し、兵士として使えそうな農夫たちを集める。その中にはアントン(マンリーケ)も含まれていた。アントン(マンリーケ)はフェリサルドの無粋さを愚弄し、自身の腕っぷしの強さを自慢して兵士になることを申し出る。フェリサルドは、収穫物の中に隠れていたティレーノも見つけ出し、兵士としてつれていくことにする。

 

 アントン(マンリーケ)とマリーナ(エルビラ)は別れを惜しみ、愛の言葉を交わして抱擁する。しかしアナとフェリックスもまた、それぞれアントン(マンリーケ)とマリーナ(エルビラ)に執着している。

 

 フェリックスはマリーナ(エルビラ)を手に入れるため、正気を失ったふりをしようと思いつく。そうすれば心配した父親が彼を治すためにマリーナ(エルビラ)と結婚させてくれるだろうと考えたのである。彼はペドロ(フアン)に協力を依頼する。アナに片思いをしているペドロ(フアン)は、アナを自分に与えてくれることを条件にそれを受け入れる。

 

 ベルムード国王がアビラに到着する。アビラでは祝祭が行われており、カスティーリャ伯爵はベルムードを祭りに誘うが、ベルムードは狩りに行くことを望む。兵士となっているアントン(マンリーケ)がベルムードに付き添う。ベルムードは彼がマンリーケであることに気づかない。

 

 ティレーノはルシンダに別れを告げ、戦場へ行く。

 

 マリーナ(エルビラ)は山の中で、不在のアントン(マンリーケ)に代わって家畜の世話をする。すると、道に迷ったベルムード国王に遭遇する。ベルムードは、妹のエルビラにそっくりな彼女を見て驚くと同時に、彼女の美しさに魅了される。

 

 ベルムードはマリーナ(エルビラ)に自分が国王であることを明かし、彼女に求愛する。マリーナ(エルビラ)は「モラーニャの牛飼いであるアントン」を愛していることを宣言し、それを拒否する。(この部分に、当時よく知られた詩が使われていると思われる)しかし彼女は、道に迷った国王のために小屋を提供する。

 

 アントン(マンリーケ)とティレーノは戦争にうんざりし、モラーニャへ帰る決心をする。

 

 ティレーノはアントン(マンリーケ)に、「フェリックスがペドロ(フアン)と協力して正気を失ったふりをした。心配したフェルナンドが彼をマリーナ(エルビラ)と結婚させることにした。マリーナ(エルビラ)はそれを知らない」と教える。アントン(マンリーケ)は驚き、すべてはアナを手に入れたいフアンの陰謀に違いないと思い込んで激怒する。

 

 フェルナンドとアナは山へ行き、マリーナ(エルビラ)にフェリックスとの結婚を勧める。フェルナンドは、結婚を偽装するだけで良いと提案し、アナは「同じように、ペドロ(フアン)と私の結婚も偽装です」と言う。マリーナ(エルビラ)は「それなら引き受けます」と答える。

 

 マリーナ(エルビラ)はベルムードにレオニードという偽名を与え、フェルナンドとアナに紹介する。

 

 フェリックスとフアンが山に到着する。二組の偽の結婚式の準備が行われる。

 

 そこへ怒りに燃えたアントン(マンリーケ)が2本の剣を持って乱入し、フアンを非難する。アントン(マンリーケ)はさらに、自分がマンリーケであること、マリーナがエルビラであること、ベルムードの暴挙によって自分たちが身分を偽らざるを得なくなったことなどを皆に告白する。フアンは恐怖のあまり身を隠す。

 

 マリーナ(エルビラ)は彼に、ベルムードがその場にいることを警告しようとするが、無視される。そこへカスティーリャ伯爵が現れる。

 

 レオニード(ベルムード)は伯爵に自分の正体を明かし、マンリーケに向かって、囚人として自首するよう要求する。しかしマンリーケはそれを拒否する。

 

 エルビラはカスティーリャ伯爵に仲裁を懇願する。慈悲深いカスティーリャ伯爵は、自分の命を差し出す代わりにマンリーケを許してほしいとベルムードに申し出る。

 

 伯爵の態度に感じ入ったベルムードは、妹のエルビラに自分が求愛してしまったことが露見したばつの悪さもあって、マンリーケを許し、エルビラとの結婚を認める。ベルムードはまた、フアンに爵位を与えてアナとの結婚を勧める。

 

 フェルナンドやフェリックスに財産や地位が与えられ、ティレーノとルシンダも結ばれて幕となる。