Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

染み無き清らかさ(Limpieza no manchada, la)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1618年

種類:宗教劇

補足:1618年に書かれ、同年にサラマンカで上演された。一般的なコメディアとは異なり、寓意的な人物が多く登場する聖体劇に近い性格を持っている。聖母マリアの「無原罪の御宿り」の教義を礼賛する目的で書かれており、多くの幻視体験をしたことで知られるスウェーデンの聖女ビルギッタが登場する。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 「静寂」は、「疑念」から質問攻めにされることに閉口し、彼女を自分の家から追い出す。「疑念」は人間の男性に姿を変え、地上をさまよっているうちに「観想」に出会う。

 

 「観想」は普段は天上に住んでいるが、今は修道院で暮らしている。修道院には未来の聖女であるビルギッタがおり、たびたび神からの啓示を受けている。「観想」はビルギッタの手助けをする。

 

 ビルギッタは、人類の祖であるアダムが犯した原罪が、無垢な幼子を含む子孫にまで及んでいることが理解できずに悩む。「注意」は彼女に助言を与え、「疑念」はビルギッタと議論を繰り広げる。「観想」は信仰と祈りを実践するよう忠告する。

 

 全身に傷を負ったヨブ旧約聖書ヨブ記』の登場人物)が現れ、自分の生まれた日を呪う。ビルギッタは、ヨブの嘆きは原罪に由来するものだと気づく。

 

 ダビデが現れ、自分の犯した罪を許してほしいと神に嘆願する。彼は部下ウリヤを殺し、彼の妻バト・シェバ(バテシバ)を奪ったのである。ダビデは、蛇と女が人類に原罪をもたらしたのだと告げる。しかしビルギッタは、「どんな暗闇も、聖母マリアの純潔を覆い隠すことはできなかったのではないか」と考える。

 

  「罪(原罪)」が橋のそばに立ち、自分の奴隷になると宣言しなければ何人もこの橋を渡ってはならないと告げる。しかし「罪」は、かつて一人の少女が彼を退けて橋を渡ったことを思い出す。

 

 「罪」は「高慢」「人類」を呼ばせる。「罪」は「人類」の額に原罪の焼きごてを押そうとするが、「人類」は怖れを見せず、「天上の水(=洗礼の水)が原罪の染みを洗い流し、自分を死から解き放ってくれるのだ」と話す。「人類」はまた、ひとりの人間が原罪の刻印を逃れたことを知っていると述べる。

 

 山の中から預言者エレミヤが出現する。エレミヤは、自分が母の胎内にいるときから神に聖別されていたことを話す。さらに、数名の羊飼いたちとともにユダヤ人の服装をした預言者ゼカリヤが現れ、洗礼者聖ヨハネを導く。ヨハネもまた、神から聖別されたとされる人物である。皆はヨハネの受けた恩恵をほめたたえる。

 

 ビルギッタは神に、キリストの母である聖母マリアも原罪の刻印を押されたのかと問いかける。天使が現れて、聖母もまたエレミヤやヨハネと同じように神の恩恵を受けているのだと答える。しかしエレミヤとヨハネは、原罪もまた負っているのだという。ビルギッタは悩む。

 

 ビルギッタの前に、顔をヴェールで覆い隠した「寓意」が現れる。彼女はビルギッタ、「注意」「観想」「疑念」を祝宴に招待する。その祝宴を見ることによってビルギッタの疑問が解ければ、自分の顔を覆っているヴェールをはずしてもよいと「寓意」はビルギッタに告げる。

 

 祝宴が始まる。4人の前で、旧約聖書エステル記』の物語が演じられる。ペルシャアハシュエロスの后エステルは、自身の属するユダヤ人たちを救うため、王に彼らの助命を願い出ようと考える。しかし王に召し出されることなく王に近づく者は処刑されることになっている。エステルは命がけでアハシュエロスの座る玉座に近づき、王に挨拶をするが、恐怖のあまり気を失ってしまう。王は驚き、玉座から下りてエステルを抱きかかえる。

 

 これらの場面を見たビルギッタは、自分の疑問が解けたことを悟り、「寓意」の顔を覆っているヴェールをはずす。彼女は、神が栄光の座から下りて聖母マリアを原罪の穢れから救ったのだと理解する。アハシュエロスは、「王妃は法律から免れている」のだとエステルに語る。

 

 「疑念」もまた、聖母が原罪を免れていることに納得する。「罪」が現れて彼女をだまそうとするが、「疑念」は「罪」を退ける。

 

 原罪を免れている聖母を礼賛する催しが行われることが「信仰心」によって告げられる。「ドイツ」「フランス」「スペイン」が登場する。「スペイン」は、聖母の染み無き清らかさを、他国の追随を許さないほど盛大に祝うことを約束する。

 

 時の経過が告げられ、フェリーペ3世の時代となる。サラマンカ大学が現れる。「スペイン」は「サラマンカ大学」が聖母の無原罪の教義を支持してくれていることに感謝を述べる。

 

 「疑念」と「注意」が、青年の姿で登場する。「疑念」は、自らの疑念が晴れたことを世に知らしめるつもりだと話す。彼らは放蕩者の学生たちに出会う。ソケーテという学生はユーモアを交えて、聖母の無原罪の御宿りを祝福するために開かれる催しについて説明する。

 

 玉座に座った「スペイン」が登場する。聖母の無原罪を祝して、踊りや歌が披露される。「疑念」「注意」「スペイン」が、この催しを企画した人々の名前を読み上げる。最後に「スペイン」が玉座から下りてチリミーア(木管楽器)を演奏する。「無原罪の御宿り」を描いた絵画が披露され、人々がその前にひざまずく場面で幕となる。

 

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参考図

エル・グレコ

《無原罪の御宿り》1608-13年頃

サンタ・クルス美術館

Web Gallery of Art, searchable fine arts image database