Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

誇り高き兄(Honrado hermano, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1596-1603年

種類:歴史劇

補足:リウィウス『ローマ建国史』に書かれているホラティウス兄弟の物語を題材としている。同じ題材からフランスの劇作家コルネイユも悲劇『オラース』を書いている。男装の女性が登場する。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

*人名表記は、判明しているものに関してはラテン語の日本語表記にならい、それ以外に関してはスペイン語の日本語表記にならう。

 

 古代ローマ時代。アルバ・ロンガの農夫ファビオは、クリアトゥス三兄弟の領地で働いている。彼はクリアトゥス兄弟の長兄(長兄の呼び名も「クリアトゥス(Curiacio)」である)に、ローマの農民たちがアルバ・ロンガの土地を荒らしていることを知らせる。

 

 ローマは、王であったヌマの死後、農民たちの横暴を制止することができなくなっていた。ファビオはクリアトゥスに、この混乱を武力で解決するよう促す。クリアトゥスは二人の弟と相談し、彼らの領地から盗んだ牛を隠しているローマのホラティウス三兄弟の家を襲撃することに決める。

 

 ホラティウス家では、父と三人の息子たちが元老院に出頭することになり、娘のフリアだけが家に残される。そこへ、ホラティウス家の領地に住む農民たちに拉致されたファビオの娘エウフロシーナが運ばれてくる。

 

 農民たちは、妻たちに見つかったためにエウフロシーナをおいて逃げ去る。エウフロシーナはフリアに自分の身の上を打ち明け、自分の主人であるクリアトゥスの素晴らしさを語って聞かせる。それまで男性に対して無関心であったフリアは、エウフロシーナの話を聞いてクリアトゥスに興味を持つ。エウフロシーナは「クリアトゥス様もまた女性に無関心なのですが、あなたの美しさを見れば魅了されるでしょう」と彼女に告げる。

 

 その後、クリアトゥスが二人の弟をつれて現れ、ホラティウス家に押し入ろうとする。しかし家の中にフリアとエウフロシーナしかいないのを見て、クリアトゥスはフリアに無礼を詫びる。クリアトゥスとフリアは互いに惹かれ合い、再び会う約束をする。

 

 ローマに着いたホラティウス兄弟の長兄(こちらの長兄の呼び名も「ホラティウス(Horacio)」である)は、恋人のフラビアに会いに行く。フラビアの父クイリーノ元老院議員である。

 

 フラビアは留守の間のホラティウスの浮気を疑い、二人は言い争う。ホラティウスの従者のロサルドは二人を仲裁しようとする。そこへクイリーノが帰宅する。クイリーノは、次の王が決まるまでの間、自分が5日間だけ王を務めることになったと二人に告げる。

 

 ホラティウスはロサルドを連れて去る。クイリーノは自分の留守中にフラビアが男性を家に入れたことで名誉が汚されたと思い、フラビアを非難する。

 

 アルバ・ロンガからの使者たちがローマにやってくる。彼らは、ローマの農民たちが自分たちの領土を荒らしていることを非難し、ローマに宣戦を布告する。

 

 クイリーノはホラティウスに、アルバ・ロンガへ使者として赴くことを命じる。ホラティウスは、クイリーノが自分とフラビアの仲を裂こうとしているのだと考えて嘆く。

 

  フリアへの激しい恋に悩むクリアトゥスは、エウフロシーナをフリアの家に滞在させ、フリアの様子を自分に報告させる。

 

 アルバ・ロンガの王メシオはローマに攻め込むべきかどうかを、ローマの最大の被害者であるクリアトゥスに尋ねようと彼を王宮へ呼び出す。そこへホラティウスが使者としてやってくる。王はホラティウスに椅子を提供することもせず冷ややかに応待するが、ホラティウスは黙って自分のマントを床に広げ、その上に座る。ホラティウスは、「ローマはアルバ・ロンガの宣戦布告を受け入れるが、平和協定を破ることは望まない。よって、国を守るためだけに戦う」とメシオに告げる。

 

 クリアトゥスはホラティウスの高潔な人格を認め、彼に椅子を提供しようとする。しかしホラティウスはそれを拒み、マントを残したまま立ち去る。クリアトゥスはそのマントを大切に保管する。しかし、「フリアへの恋心ゆえにそのような態度を取っているのなら用心すべきだ」と弟に指摘されたクリアトゥスは、恋よりも名誉の方を重んじることを約束する。

 

 ローマの人々は新しい王を選ぶため、聖なる鷲を空に放って鷲が止まった家の持ち主を王にすると決定する。鷲はトゥッルス・ホスティリウスの家に止まり、トゥッルスが次の王となる。

 

 次期の王の座を狙っていたクイリーノは、元老院議員のセンプロニオと取引をし、「自分に投票してくれれば娘のフラビアを妻に差し出す」ともちかけていた。父からセンプロニオとの結婚を強要されたフラビアは「私はホラティウスと結婚したい」と反発するが、家に閉じ込められてしまう。彼女はフリアに助けを求める手紙を書く。

 

 ロサルドがフラビアの手紙をフリアに届ける。フリアは兄の恋人であるフラビアを助ける決心をする。

 

 フリアとエウフロシーナは男装してフラビアを助け出す。フリアはホラティウスの弟たちと遭遇するが、正体を隠したまま「私はあなた方の兄の友人で、彼の恋人の家を見守っているのだ」と説明する。

 

 フラビアがいなくなったことを知ったクイリーノは、「ホラティウスが娘を拉致した」とトゥッルスに訴え出る。弟たちからそのことを知らされたホラティウスは立腹する。

 

 クリアトゥスがローマに使者としてやってくる。彼はホラティウスに敬意を表し、「トゥッルス王と我が国の王メシオが両者ともテヴェレ川のほとりに出向き、和平交渉をすることを望む」と告げる。

 

 ホラティウスはクリアトゥスに敬意を払い、彼を家に招く。その夜、クリアトゥスとフリア、ホラティウスとフラビアは結ばれ、結婚の約束を交わす。

 

  テヴェレ川に架かる橋の上で会談をしたトゥッルスとメシオは、周辺諸国の介入を防ぐため戦争は行わないこと、その代わりそれぞれの国を代表する戦士数名で決闘をすることを取り決める。ローマ側の代表はホラティウス三兄弟、アルバ・ロンガ側の代表はクリアトゥス三兄弟と決められる。

 

 ホラティウスから、両家の決闘のことを聞かされたフリアはショックのあまり失神する。フリアはホラティウス家の名を捨て、兄を敵に回してでも恋人を救おうと決心する。彼女は兄の剣の剣先に細工をしようと試みる。

 

 フラビアもクリアトゥスの剣に細工をしようとするが、ホラティウスに見つかってしまう。彼女からフリアの行動を知らされたホラティウスは立腹し、フリアは逃げる。

 

 フリアはクリアトゥスに愛のしるしとしてマントを贈り、決闘の際はそれをつけていてほしいと頼む。

 

 二人の王が見守る中、ホラティウス三兄弟とクリアトゥス三兄弟の決闘が行なわれる。ホラティウスの二人の弟は倒されるが、ホラティウスはクリアトゥス三兄弟を殺して勝利する。ホラティウスは、フリアが贈ったクリアトゥスのマントを遺体から引きはがす。メシオはトゥッルスに、アルバ・ロンガ側の敗北を認める。

 

 喪服を着たフリアが現れ、クリアトゥスの死を嘆く。彼女はホラティウスに向かって、「クリアトゥスに魂をささげた私の胸を剣で貫くことによって、真の勝利を得て下さい」と嘆願する。ホラティウスは、妹の行動はホラティウス家にとって不名誉なことだと考える。妹を殺すことが誠実な兄として取るべき行動だと思った彼は、フリアを剣で刺し殺す。

 

 ローマの法律にのっとり、妹を殺したホラティウスは捕えられて死刑を宣告される。

 

 ホラティウスが名誉を重んじる人物であることを見て取ったクイリーノは、彼とフラビアとの結婚を許可し、ホラティウスの父親とともに、ローマの人々に向ってホラティウスの助命を嘆願する。

 

 ホラティウスは死刑を免れ、フラビアとの結婚を許される。ローマとアルバ・ロンガの争いに終止符が打たれ、マルス神殿でホラティウスの勝利の祝典が行われて幕となる。

 

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ジャック・ルイ・ダヴィット《ホラティウス兄弟の誓い》1784年 ルーヴル美術館

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