Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

モスクワ大公、および追放された皇帝(Gran duque de Moscovia y emperador perseguido, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1606年?

種類:歴史劇

補足:モスクワ大公にしてロシアのツァーリであったイワン4世(雷帝)の息子殺し、イワン4世の末子ドミトリーの死、その後ツァーリとなった貴族ボリス・ゴドゥノフ、ドミトリーの名を僭称した「偽ドミトリー1世」の出現などの史実をもとにして書かれている。この作品は偽ドミトリー1世の出現から数年後に執筆されたとみなされており、偽ドミトリーはドミトリーと同一人物であるという設定になっている。ロシアの歴史を扱ったヨーロッパの戯曲としては、きわめて早い時期の作品である。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

  モスクワ大公国の君主バシリオ(イワン雷帝がモデル)の長子テオドーロ(イワン雷帝の息子フョードル1世がモデル)は、幼い頃に食べさせられた薬草が原因で知能に障害があるとみなされ、後継者の資格を剥奪されていた。彼に薬草を食べさせたのは、次男のフアン(イワン雷帝の息子イワンがモデル)を支持する貴族たちであった。

 

 テオドーロは、自分が大公の後継者になるべきであると主張する。12歳になる彼の息子デメトリオ(ロシア語ではドミトリー。イワン雷帝の末子ドミトリー、および偽ドミトリー1世がモデル)は、テオドーロとフアンの争いを仲裁しようとする。バシリオは孫のデメトリオの賢さに驚く。

 

 テオドーロの妻クリスティーナは、デメトリオの身に危険が及ぶことを恐れ、彼を宮廷から離れた場所で養育しようと決心する。養育係には、デメトリオと同年齢の息子がいるドイツ人貴族のランベルトが選ばれる。

 

 フアンの妻イサベラは、子どもができないことに悩んでいた。彼女はその原因が夫にあると考え、自分に求愛している貴族ロドゥルフォとの間に子どもをつくろうと計画する。

 

 バシリオは、イサベラがよからぬことを企んでいると勘付き、彼女を非難する。バシリオはクリスティーナを擁護するが、イサベラはバシリオをネロのような暴君だとなじる。激高したバシリオはイサベラを平手打ちする。

 

 イサベラは、バシリオに辱められたと夫のフアンに訴える。フアンは妻の言葉を信じる。バシリオの怒りは頂点に達し、彼はフアンを棍棒で殴りつける。フアンは死ぬ。

 

 バシリオは息子を殺してしまった罪の意識にさいなまれ、まもなく病死する。テオドーロはまだ後継者の資格を得ていなかったため、デメトリオが成人するまでクリスティーナの兄ボリス(ボリス・ゴドゥノフがモデル)が国を統治することが決められる。

 

 ランベルトの城で、デメトリオはランベルトの息子セサルとともに健やかに育つ。スペイン人のルフィーノがデメトリオに仕える。

 

 ボリスは権力を自分の手中に収めるため、デメトリオ暗殺を企てる。ボリスは「自分に協力すれば、イサベラと結婚させてやる」とロドゥルフォにもちかけ、彼を味方に取り込む。

 

 ボリスの計画を知ったルフィーノは、急いでそれをランベルトに知らせる。ランベルトはデメトリオを守る決心をする。ロドゥルフォがデメトリオを殺しに来ると、ランベルトは彼をわざと息子のセサルの眠っている部屋へ案内する。セサルをデメトリオだと思ったロドゥルフォは、彼を殺す。

 

 10年が経過する。デメトリオは死んだとみなされ、ボリスはモスクワ大公となっていた。セサルがロドゥルフォに殺されたとき、ランベルトの城には火が放たれ、ランベルトの妻はその際に死んでいた。テオドーロの死後、寡婦となったクリスティーナは修道院に入ったと噂されていた。

 

 世間の目を逃れてデメトリオをかくまってきたランベルトは、モスクワ大公の座を取り戻すよう彼に言い残して死ぬ。デメトリオはルフィーノとともに修道院に身を隠す。

 

 ボリスは専横的な君主となり、権力をほしいままにしていた。彼はデメトリオが生きているという噂を耳にするが、ロドゥルフォはデメトリオが生きているはずはないときっぱり否定する。

 

 デメトリオとルフィーノがいる修道院に、偶然ボリスが臣下とともにやってくる。ボリスはデメトリオと亡き甥の顔立ちが似ていることに気づき、ひそかに彼を殺そうとする。危険を感じたデメトリオとルフィーノは、修道院から逃げ出す。

 

 その後、デメトリオとルフィーノは、農夫のベラルドのもとに身を寄せる。

 

 ある日、ベラルドの家のそばにラティーノ伯爵と娘のマルガリータが狩りにやってくる。デメトリオはマルガリータを見て恋に落ちる。

 

 デメトリオは、パラティーノ伯爵がポーランド国王と懇意な間柄であることを知り、モスクワ大公の地位を取り戻すために彼が協力してくれるかもしれないと考える。彼とルフィーノは、伯爵に料理人として雇われることに成功する。

 

 ボリスは、「デメトリオは生きている」と予言した占星術師に腹を立て、彼を投獄したのち絞首刑にする。

 

 パラティーノ伯爵の家で宴会の食事を用意したデメトリオは、人々が「デメトリオが生きているらしい」と噂しているのを耳にする。デメトリオはマルガリータに会い、自分の正体を明かして彼女への恋心を告白する。

 

 デメトリオの正体を知ったパラティーノ伯爵は、ポーランド国王にデメトリオを紹介する。国王はデメトリオに5万の兵を与える。

 

 「デメトリオが生きていた」という知らせがボリスに伝わる。ボリスはロドゥルフォを非難し、今度こそデメトリオを殺すよう彼に命令する。

 

 ロドゥルフォは使者としてポーランド国王に謁見し、「デメトリオは頭のいかれた嘘つきです」と告げる。国王は、ロドゥルフォの言葉を信じるふりをして伯爵宛てに手紙を書く。国王がデメトリオの処刑を命じたに違いないと考えたロドゥルフォは、その手紙をもって伯爵のもとへ行く。

 

 ボリスから派遣された暗殺者のフィネアエリアーノは、デメトリオを誘惑して油断させ、殺そうとする。しかし罪の意識にさいなまれたフィネアがエリアーノの凶行を制止し、暗殺は失敗に終わる。デメトリオは彼らを許し、逃がしてやる。

 

 ロドゥルフォが伯爵に、国王からの手紙を渡す。手紙には「この手紙を持ってきた男は、デメトリオを嘘つき呼ばわりしている。好きなように扱うがいい」と書かれていた。デメトリオの意志によってロドゥルフォは処刑を免れる。デメトリオはロドゥルフォに「モスクワへ戻り、ボリスに謝罪を要求してほしい」と依頼する。

 

 しかしボリスは金の力で兵を集め、デメトリオに戦いを挑む。激しい戦闘の末、ボリスは敗れ、デメトリオに屈服して自殺する。ボリスの妻もまた、息子たちとともに毒薬をあおって自殺する。

 

 デメトリオはモスクワ大公国の君主となり、マルガリータと結婚する。忠実な従者であったルフィーノが、デメトリオから多くの褒賞を与えられて幕となる。