Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

偽りなき演技(Fingido verdadero, lo)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1608年?

種類:聖人伝に基づく宗教劇

補足:ジャンルとしては宗教劇であるが、メタ演劇の要素をもった興味深い作品である。ローマのディオクレティアヌス帝時代に殉教したとされる喜劇役者の聖ゲネシウスを扱っており、劇作家ティルソ・デ・モリーナに捧げられている。フランスの劇作家ジャン・ロトルーによる『聖ジュネ正伝Le Véritable Saint Genest』は、本作に基づいて書かれた。

2010年のアルマグロ演劇祭で、人形劇団マキナ・レアルによって上演されている。

男装の女性が登場する。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

ラテン語名が判明している人物については、ラテン語の読みにしたがって表記しています。

 

  ローマ皇帝アウレリウス・カルスは、軍を率いてペルシャとの戦に向かう。

 

 兵士たちは、皇帝が留守にしている間に彼の息子カリヌスがローマで自堕落な生活を送っていることを嘆き合う。彼らは、皇帝のもう一人の息子ヌメリアヌスは立派な人物であると賞賛し、ヌメリアヌスが正当な後継者でないことを残念がる。

 

 カミーラという娘が、兵士たちにパンを売りに来る。兵士の一人ディオクレティアヌスは仲間たちのために、「私が皇帝になったら、きっと代金は払う」と約束してカミーラからパンをもらう。カミーラは「猪を殺した時に、あなたは皇帝になれるでしょう」と謎めいた予言を残して去る。

 

 空が曇り、嵐が兵士たちを襲う。皇帝アウレリウス・カルスは雷に打たれて死ぬ。

 

 皇帝の死を知らされた息子のヌメリアヌスは、義父にあたる執政官のアペルから「あなたを皇帝にする」と約束されるものの、まずは兄弟のカリヌスの意向を確かめようと考える。

 

 ローマでは、カリヌスが従者のセリオと愛人のロサルダ(男装している)をつれて夜の街を徘徊する。セリオはカリヌスの女遊びの相手として女優はどうかと勧めるが、カリヌスは自分の身分に対して不釣り合いだと不満を言う。

 

 彼らは、著名な劇作家にして俳優であるゲネシウスを訪問する。ゲネシウスはカリヌスに「私たちの劇団で最も優れた女優は、キリスト教徒になり悔悛するためマルセイユへ行ってしまいました(*マグダラの聖マリアに倣ってか)」と告げる。カリヌスはゲネシウスに、自分とロサルダを主人公とした戯曲を書いてほしいと頼み、ゲネシウスと演劇に関するいくつかの議論をする。

 

 その後、カリヌスの元に執政官のレリオが現れる。彼は自分の妻をカリヌスに奪われたことを恨み、カリヌスを殺す。

 

 ヌメリアヌス率いるローマ軍がペルシャから帰還する。カリヌスが死んだことにより、ローマ市民はヌメリアヌスを皇帝として迎える準備をする。しかし、自ら皇帝の座につきたいという野心にかられたアペルは、義理の息子のヌメリアヌスを暗殺する。

 

 アペルによるヌメリアヌス暗殺を知ったディオクレティアヌスは、「猪を殺した時に、あなたは皇帝になれる」というカミーラの予言を思い出す。「猪」とはアペル(ラテン語で猪を意味する)のことだと確信したディオクレティアヌスは、自らの手でアペルを殺し、ローマ皇帝の座につく。

 

 ディオクレティアヌスは、ローマ市民の人気を獲得するため、キリスト教徒たちを猛獣の餌食にする見世物を企画する。彼は友人のマクシミアヌスに帝国を分け与え、また自分に幸運をもたらしてくれたカミーラを特別に扱い、常に自分の傍に置く。

 

 ディオクレティアヌスはゲネシウスに、劇を上演するよう依頼する。ゲネシウスは、自分が得意とする恋愛喜劇を上演すると告げる。ゲネシウスは最近、恋人の女優マルセーラに捨てられたばかりであった。マルセーラはその後、俳優のオクタビオとつき合っている。劇の内容と彼らの人間関係は偶然にも一致している。

 

 ゲネシウスは皇帝の前で、マルセーラとともに痴話喧嘩の場面を演じる。しかし彼は演技をしているうちに現実と芝居との区別がつかなくなり、途中からマルセーラ本人を非難し始める。事情を知らないディオクレティアヌスは、ゲネシウスの演技が真に迫ったものであると感嘆する。

 

 脇役として登場したファブリシオの台詞で、ゲネシウスは我に返る。その後、芝居の中でマルセーラとオクタビオは駆け落ちし、ゲネシウスは嫉妬に狂った男を見事に演じる。

 

 レリオはディオクレティアヌスに、「ゲネシウスがもっと上手いのは、キリスト教徒の演技です」と教える。ディオクレティアヌスは、ゲネシウスに翌日はキリスト教徒を揶揄する喜劇を演じさせようと計画する。

 

 舞台の上では芝居が続いている。ファブリシオが登場し、「マルセーラとオクタビオが本当に駆け落ちしてしまった」とゲネシウスに語る。ゲネシウスはショックを受ける。二人がいなければ劇を続けることができないので、ゲネシウスは舞台の上からディオクレティアヌスに「彼らの駆け落ちを止めさせてください」と懇願する。しかしディオクレティアヌスは困惑し、「それはおまえの本心なのか?それとも、私をこの芝居に参加させるための演技なのか?」と問う。

 

 そこへ従者役のピナベーロが現れ、オクタビオが戻ってきたと言って芝居をうまく終わらせる。ディオクレティアヌスは満足して去る。その後、ピナベーロの言葉がその場をおさめるための嘘であったことを知ったゲネシウスは落胆する。

 

 翌日、ディオクレティアヌスとカミーラは互いに愛の言葉を交わす。見世物に使うための猛獣が彼らの前に運ばれてくる。カミーラは「どんな猛獣よりも恐ろしいものは愛です」と語り、人間を猛獣の餌食にする見世物は見たくないとディオクレティアヌスに告げる。

 

 ディオクレティアヌスの前にゲネシウスが現れる。マルセーラとオクタビオは結婚し、ゲネシウスと和解して劇団に戻っていた。ディオクレティアヌスはゲネシウスに、キリスト教徒を揶揄する劇を上演し、洗礼の場面を演じるようにと命じる。

 

 ゲネシウスが独りで失恋の悲しみに浸っていると、マルセーラが現れる。マルセーラは、「私とオクタビオが結婚する脚本を書いたあなたに責任がある」と彼に告げる。マルセーラはゲネシウスを誘惑し、嫉妬したオクタビオがそれをやめさせる。

 

 ゲネシウスは再び独りになり、洗礼の場面の練習をする。彼は演技に没入し、洗礼を嘆願する彼の声は天上へと届けられる。突然、彼の救済を約束する神の声が天から響き、ゲネシウスは恍惚状態に陥る。

 

 そこへ子役のファビオが「マルセーラが準備不足のため、天使役を辞退している」と報告しに来る。ゲネシウスは、神の声だと思ったのはファビオの声だったのだと思い、我に返る。彼はマルセーラの代わりにファビオに天使役を依頼する。

 

 ディオクレティアヌスが家臣をつれて劇場へ現れる。ゲネシウスの芝居が始まる。マルセーラの滑稽な口上に続き、囚人姿のゲネシウスが登場する。

 

 ゲネシウスが洗礼を受ける場面になると、舞台の上に本物の天使が現れて彼に洗礼を授ける。ディオクレティアヌスを初め、観客はそれが天使だと気づかず、俳優だと思いこむ。皆は見事な舞台であると感嘆する。

 

 ゲネシウスが台本通りの演技をしていないのを見て、他の俳優たちは困惑して舞台に出てくる。そこへ本来ならば天使を演じているはずのファビオが現れ、芝居はさらに混乱する。

 

 客席にいたディオクレティアヌスは苛立ち、準備不足だと俳優たちを非難する。ゲネシウスは演技ではなく本物の洗礼を受けたことをディオクレティアヌスに告白し、自分はキリストの書いた脚本にしたがって、これから殉教するのだと予言する。怒ったディオクレティアヌスは「芝居の中で生きてきたおまえは、芝居の中で死ぬのだ」とゲネシウスに死刑を宣告する。

 

 家臣のレントゥロはゲネシウス以外の劇団員を尋問する。俳優たちがすべて登場し、それぞれレントゥロの前で自己紹介をして自分の持ち役(恋人役、従者役、子役など)を説明する。キリスト教徒がゲネシウスの他にいないことを確認すると、レントゥロは劇団員たちにローマから出ていくことを命じる。

 

 劇団員たちは、ゲネシウスの代わりにオクタビオを指導者にすることを決定して、ローマから立ち去る。彼らは、槍で体を貫かれたゲネシウスの姿を見る。キリスト教の殉教者となったゲネシウスが天国へ行く喜びを語り、「明日の朝、私は第二部を迎える」と観客に告げて幕となる。

 


Festival Internacional de Teatro Clásico de Almagro. 33 edición. Lo fingido verdadero.

 

 

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