Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

貴人の妬み(Envidia de la nobleza, la )

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1613-1618年

種類:歴史劇

補足:モーロ人(イスラム教徒)を主人公とした劇のひとつ。グラナダ王国陥落前のセグリー一族とアベンセラーヘ一族との内部抗争、および後者の虐殺を背景としている。これについては1595年に刊行されたヒネス・ペレス・デ・イータの『セグリー党とアベンセラーヘ党の物語』(通称『グラナダの内乱』)に記述されている。アルハンブラ宮殿内の「アベンセラーヘスの間」は、アベンセラーヘ一族が虐殺された場所と伝えられていることからこの名がある。

参照:ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 

  カルタマ(アンダルシア地方の一都市)に住むモーロ人の青年セリンドと彼の従妹リーファは、ともにアベンセラーヘ一族に属し、愛し合っている。ハリーファの父親はカルタマの城塞主である。

 

 グラナダ王国の王アルマンソールは、ハリーファの美しさを伝え聞いて彼女を妻にしたいと望む。ハリーファの父親はそれに応じる。セリンドは、なんとか彼女の結婚を阻止したいと考える。

 

  セリンドの友人サイデは、ハエンにいるキリスト教徒のサンティアゴ騎士団長に助けを求めることを提案する。セリンドは騎士団長に手紙を書き、キリスト教徒たちの言葉を話せる従者のスレーマにそれを託す。

 

 サンティアゴ騎士団長の野営地を訪れたスレーマは、片言のスペイン語を話しながらセリンドの手紙を団長に渡す。「ハリーファとの結婚を手助けしてもらえたら、一生あなたへの恩は忘れない」というセリンドの手紙を読んだ団長は、セリンドを手助けしようと決心する。

 

 しかしアルマンソールの家臣レドゥアーンは、予定より早くハリーファを迎えに来てしまい、セリンドの計画は失敗する。レドゥアーンは、嘆き悲しむハリーファを見て当惑し、アルハンブラ宮殿やヘネラリフェの庭園の美しさを語って彼女を励ます。

 

 騎士団長とその部下たちがセリンドのもとに到着するが、ハリーファはすでにグラナダへ連れていかれた後であった。セリンドはそれでも彼らに感謝の気持ちを示し、あたたかくもてなす。

 

 アルマンソールは王宮に到着したハリーファを迎えるが、彼女を手に入れたと思ったとたんに気もちがさめてしまう。

 

 王宮の女性リンダラーハはアルマンソールを愛しており、彼女に言い寄る青年アメーテを冷たく拒否する。アメーテは、自分がセグリー一族であるのが拒まれた原因なのだと思いこみ、敵対するアベンセラーヘ一族への妬みをつのらせる。

 

 アルマンソールとハリーファが結婚した後、セグリー一族が王妃ハリーファの誕生日を祝うことになり、セリンドもその催しに招待される。セリンドはグラナダへ向かう途中でハエンに寄り、騎士団長にそのことを告げる。騎士団長は「自分もアベンセラーヘ一族のひとりに変装してきみに同行する」と申し出る。

 

 ハリーファの誕生祝の席に参上したセリンドは、ひそかにハリーファに手紙を渡す。アルマンソールはキリスト教徒の捕虜に、祝いの歌を歌わせる。しかし捕虜はグラナダ王国キリスト教徒によって滅ぼされることを予言する歌を歌い、アルマンソールの怒りを買う。

 

 アルマンソールはレドゥアーンに「ハエンを征服し、サンティアゴ騎士団長の首を取って来い」と告げる。その言葉を聞いた騎士団長は、アベンセラーヘ一族に変装したまま、レドゥアーンに「騎士団長を捕えに行く前に私と勝負しろ」と言う。

 

 アベンセラーヘ一族を妬むアメーテはレドゥアーンの味方につくと宣言し、「アベンセラーヘ一族は女のように享楽的で、武力がない」と叫ぶ。感情を害したアルマンソールは、アメーテを罰する。

 

 騎士団長はセリンドに、「これからグラナダを包囲するつもりだ」と告げる。セリンドは「私はいずれキリスト教に改宗する」と約束し、今はやめておくようにと騎士団長を制止する。

 

 セリンドはアメーテに決闘を挑まれる。セリンドは承諾するが、ハリーファからの手紙で「バルコニーまで会いに来てほしい」と告げられた時間と決闘の時間が重なってしまう。それを知った騎士団長は暗闇の中でセリンドに扮してアメーテと決闘し、勝利する。騎士団長はうっかりと「サンティアゴ!」(キリスト教徒が戦いの際に叫ぶ言葉)と叫び、アメーテにキリスト教徒であることを知られてしまう。

 

 セリンドはハリーファと再会を果たす。二人は騎士団長の庇護を頼りにカスティーリャへ逃げる計画を立てるが、アルマンソールの力が強大であるため、彼が戦いのためグラナダを去るのを待つことにする。

 

 翌日、ハリーファに別れを告げに来た騎士団長は、キリスト教徒でありながらセリンドを助けた本当の理由を告白する。「私の兄アルバロ・ペレス・パチェーコはかつてカルタマであなたの父上の捕虜になったことがあり、その時にセリンダというモーロ人の女性と恋に落ちたのです。二人の間に生まれたのがセリンドです。兄は死ぬ間際に、私に『カスティーリャ王フェルナンドグラナダを征服することがあれば、おまえが私の息子を保護し、キリスト教に改宗させてくれ』と頼んだのです」

 

 騎士団長は、セリンドとともにハリーファも保護することを約束してハエンへ去る。

 

 アメーテはアルマンソールに「アベンセラーヘ一族は、キリスト教徒と手を結んでいます」と讒言する。セリンドはサイデを通じて身の危険を知らされるが、ハリーファを残して逃げることを拒否する。

 

 ハリーファはアルマンソールに、アベンセラーヘ一族の助命を嘆願する。しかしアルマンソールはハリーファを追放し、リンダラーハを彼女の代わりに妻にすると告げる。ハリーファはカルタマへ帰され、セリンドを含むアベンセラーヘ一族はレドゥアーンに捕らえられる。

 

 スレーマから事情を聞かされた騎士団長は、国王フェルナンドの代理としてグラナダに赴き、アルマンソールに「アラマ市を譲るので、甥のセリンドの命を助けてほしい」と告げる。アベンセラーヘ一族23人の処刑はすでに終了していたが、最後の一人であるセリンドのみがかろうじて命を助けられる。

 

 レドゥアーンとハリーファキリスト教徒の軍勢に捕らえられる。アルマンソールはレドゥアーンだけを取り戻し、リンダラーハの嫉妬を避けるためにハリーファを見放す。ハリーファは騎士団長に保護される。

 

 カスティーリャ国王フェルナンドがハエンに到着する。セリンドはキリスト教に改宗してアルバロと名乗り、ハリーファとスレーマも改宗して、それぞれフアナ、フェルナンドと名乗る。アルバロ(セリンド)とフアナ(ハリーファ)の結婚が告げられて幕となる。 

 

 

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マリア(マリアーノ)・フォルトゥーニ

《アベンセラーヘ一族の虐殺》1870年頃

バルセロナカタルーニャ美術館

http://www.museunacional.cat/en



 

 

概説 スペイン文学史

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