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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

正気を失った賢者(Cuerdo loco, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1602年

種類:架空の宮廷劇

補足:医師のトマス・タマヨ・デ・バルガスに献呈されている。正気を失ったふりをする王子が描かれる。架空の国アルバニアが舞台となる。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

  ヨーロッパの小国アルバニアに住むプロスペロ伯爵は、妹のルシンダの部屋に怪しい男性がいるのを見つける。男性は逃げ、ルシンダはその男性を知らないと言う。プロスペロは王宮からの急な呼び出しを受けて去る。ルシンダの独白により、逃げた男性はルシンダの秘密の恋人であることが判明する。

 

 アルバニア国王の死後、寡婦となった王妃ロサニアは、野心家の軍人ディナルド公爵から「この国をともに支配しよう」ともちかけられる。ロサニアは初めは躊躇するが、ディナルドを愛するがゆえに彼に従う。ディナルドは、アルバニアの軍隊に反乱を起こさせ、国王の先妻の息子アントニオ王子から王位継承権を奪ったのちにロサニアと結婚するという計画を立てる。

 

 プロスペロ伯爵が王宮に到着する。彼を呼び出したのはアントニオ王子だった。ディナルドを信用していないアントニオは、プロスペロを軍の司令官に任命し、オスマン・トルコと戦うことを命じる。プロスペロは不思議に思いながらも王子の命令に従う。

 

 王子は継母のロサニアをフランスへ追放したいと思いながらも、亡き父への敬意からそれに踏み切れないでいる。ルシンダの秘密の恋人の正体は王子であった。

 

 軍の司令官の座をプロスペロに奪われたディナルドは、計画を変更する。彼とロサニアは、王子の側近レオニードタンクレードと手を組み、王子の暗殺を計画する。しかし家臣たちに慕われている王子を殺すのは難しいと判断したロサニアは、王子を殺さず、毒薬を飲ませて正気を失わせることにする。

 

 王子に毒薬を飲ませる役は、いつも王子に「メランコリーに効く飲み薬」を提供しているスペイン人の料理人ロベルトに命じられる。しかし善人のロベルトは、王子にディナルドとロサニアの陰謀をひそかに教える。

 

 ロベルトはアントニオとルシンダに「裏切り者たちを罰する機会が与えられるまで、王子はしばらく正気を失ったふりをしているのがよい」と助言する。

 

 王子はロベルトの助言に従い、毒薬を飲んで正気を失ってしまったように見せかける。その演技を見たディナルドとロサニアは、計画が成功したと思って満足する。彼らは王子に薬を飲ませた罪をルシンダにかぶせて、彼女を投獄する。

 

 ディナルドはアルバニアの貴族たちを集めて、「アントニオ王子が正気を失ってしまったので、回復するまではロサニア様が統治を行う」と告げる。彼らは王子に契約書類を書かせようとするが、王子はでたらめな言葉を書く。貴族たちは愛する王子のみじめな状態を見て嘆く。

 

 ロサニアはレオニードに「独房にいるルシンダを殺しなさい。そして戦地にいるプロスペロ伯爵に、妹が気のふれた王子によって殺されたと知らせなさい」と命令する。

 

 戦地にいるプロスペロは、ルシンダに恋をしている王子が自分を厄介払いするために戦地へ送ったのではないかと疑い始める。彼はオスマン・トルコの皇帝に「私と同盟を結んで、私の妹の名誉を汚したアルバニアの王子を失墜させよう。同意してくれたらアルバニアの支配権をトルコに譲渡する」と提案する。皇帝はそれを受け入れる。

 

 王子はロサニアの陰謀に気づき、ルシンダをひそかに独房から逃がす。ロベルトはルシンダを、羊飼いベラルド一家のもとへ案内する。王子はレオニードを殺し、その死体をルシンダの死体と見せかけてロサニアをあざむく。

 

 ロサニアはタンクレードに命じて、ルシンダの死をプロスペロに知らせる。ルシンダの死によって王子が暴れることを恐れたロサニアは、王子を投獄するよう命じる。

 

 ルシンダの死を知らされたプロスペロは、すぐに王子への反乱を起こし、トルコの軍勢とともに王宮へ向かう。

 

 ルシンダは村人に変装して牢獄に忍び込み、王子を逃がす。しかし王子はタンクレードに捕まり、連れ去られる。ルシンダは逃げ、ロベルトに助けを求める。

 

 プロスペロとトルコの皇帝はロサニアと講和を結び、ともに王子を失墜させることで同意する。

 

 戦場に残された兵士たちは、プロスペロがアルバニア国をトルコに売ったのではないかと疑い始める。彼らはタンクレードを捕え、王子を解放する。王子はディナルドとロサニアの陰謀を兵士たちに伝える。

 

 王子は兵士たちを指揮して、トルコの軍と戦う。ルシンダとロベルトは、離れた場所で激しい戦闘の音を聞く。王子が殺されたに違いないと思ったルシンダは、彼の後を追おうと隠し持っていた毒薬を飲んでしまう。

 

 王子の指揮によって、アルバニア軍はトルコ軍を敗走させる。王子は王宮に入り、トルコの皇帝に彼の敗戦を伝える。王子はプロスペロに、自分がルシンダとすでに結婚契約を取り交わしており、彼の名誉を傷つけてはいないことを知らせる。プロスペロは謝罪し、ディナルドとロサニアは自分たちの裏切りを認める。

 

 そこへ、ぐったりとしたルシンダを腕に抱えたロベルトが現れ、ルシンダの死を王子に知らせる。悲しみに打ちひしがれている王子を見たプロスペロは「もしルシンダを助けたら、われわれ全員をゆるしてほしい」と提案する。王子はそれを受け入れる。

 

 プロスペロは、ルシンダの持っていた毒薬は自分から彼女が盗んだものであり、ほんとうは毒薬ではなく眠り薬であることを告白する。彼の言葉通り、深い眠りに落ちていたルシンダは王子の呼びかけとともに目覚める。王子は歓喜する。

 

 トルコの皇帝は祖国へ戻り、ディナルドとロサニアはフランスへと去る。プロスペロは王子の従妹と結婚し、軍の司令官とロベルトに褒美が与えられて幕となる。