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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

“騎士団長殺し”を描いたもの

 作家の村上春樹氏は、最近出版された『騎士団長殺し』についてのインタビューで、「騎士団長殺しというタイトルが、まず最初にあった」と述べています。騎士団長は、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の登場人物であり、村上氏はこのオペラを聴くたびに「騎士団長って何だろう」と思っていたとのことです。

 

朝日新聞デジタルの記事(2017年4月2日)

村上春樹さん「騎士団長殺し」語る 「私」新たな一人称:朝日新聞デジタル

 

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 

 『ドン・ジョヴァンニ』はイタリア語で書かれたオペラであり、騎士団長はコメンダトーレ commendatore と表現されています。彼は主人公のドン・ジョヴァンニに殺される役です。イタリア語とスペイン語とではいくらか意味に相違があるかもしれませんが、もともと『ドン・ジョヴァンニ』はスペインのドン・フアン伝説をもとにしたものであり、舞台もスペインですから、コメンダトーレという語はスペイン語のコメンダドール comendador に対応して使われていると考えられます。

 

 コメンダドールは、正確な意味としては「騎士修道会の所領の領主」であり、スペインでエンコミエンダ(騎士修道会の所領)を所有する騎士のことです。しかし、「騎士修道会の所領の領主」ではややすわりが悪いためか、「騎士団長」と訳されることもあります。(本来の騎士団長はマエストレmaestre と呼ばれます)。

 

 ヨーロッパの有名な騎士修道会には、聖ヨハネ騎士修道会やテンプル騎士修道会などがありますが、国土回復戦争(レコンキスタ)下のイベリア半島では、カラトラーバ、アルカンタラ、サンティアゴなど独自の騎士修道会が創設されました。しかしイスラム勢力が半島から撤退すると、各修道会の会員は実質的に世俗貴族と同様の扱いを受けることになります。17世紀前半には、宮廷での出世を狙う野心家たちが騎士修道会に入るようになり、多くのコメンダドールたちは庶民の反感を買っていました。ロペはコメンダドールの登場するコメディアをいくつか書いていますが、『フエンテ・オベフーナ』『ペリバーニェスとオカーニャの騎士団長』『コルドバの騎士団長たち』など、代表的な作品ではみなコメンダドールが殺される役になっています。

 

参考文献:

牛島信明責任編集・カルデロン他(岩根圀和佐竹謙一訳)『スペイン中世・黄金世紀文学選集7 バロック演劇名作集』国書刊行会、1994年

池上岑夫ほか監修『スペイン・ポルトガルを知る事典』平凡社、1992年

・Pedraza Jiménez, Felipe B. Lope de Vega; Pasiones, obra y fortuna del "monstruo de naturaleza", EDAF, 2009.

 

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