Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

イリェスカスの騎士(Caballero de Illescas, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1601?-1603年

種類:ピカレスク(悪者)小説的な劇

補足:カトリック両王時代(15世紀後半)のスペインとイタリアが舞台となる。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 フアン・トマスは、農村に住む青年である。彼はある日、父親ペドロに賭け事や女遊びをやめるように忠告される。腹を立てたフアンは、「いつか国王にご馳走される身分になってやる」と豪語し、さびた小さな剣を手にして家を出ていく。

 

 イリェスカスを目指して歩くフアンは、二組の男女と出会う。フアンは女性たちを口説こうとするが、田舎者とばかにされ、怒って彼女たちを蹴りとばす。連れの男性たちがフアンに反撃し、フアンはそのうちのひとりを殺す。

 

 コレヒドール(王室派遣の行政長官)や警吏たちに追われたフアンは、イリェスカスの街の教会の塔に昇り、石を投げて抵抗する。たまたま軍隊が到着したためにコレヒドールがその場を離れ、そのすきにフアンは見張りの警吏たちを殴って逃亡する。

 

 その後、フアンは軍隊に入る。給料を得るとフアンはすぐにそれをカード賭博の賭け金にしてしまう。新入りの兵士アルバラードがフアンの誘いに乗る。フアンはいんちきをして勝ち、兵士たちを怒らせてしまう。

 

 兵士たちにまぎれこんでいた男装の女性リセーナは、アルバラードの連れだったが、フアンに魅了され、彼とともに逃げる。

 

 フアンとリセーナはマドリードに到着する。しかし兵士たちがフアンを追いかけてくる。フアンはそのうちのひとりを殺し、再び逃亡する。

 

 マドリードでは、カスティーリャ王女イサベルアラゴン王子フェルナンドの結婚が行われようとしていた。フェルナンドは、結婚式の前に密かに会いたいというイサベルの望みにこたえ、変装してイサベルのいる王宮へ向かう。そこへ、フアンを追う兵士たちが現れ、フェルナンドをフアンと間違えて襲いかかる。

 

 フアンは、フェルナンドが王子であることには気づかないまま、彼を助けて兵士たちを追い払う。フェルナンドは彼に感謝し、ダイヤモンドを渡して言う。「もしイサベル王女がフェルナンド王子と結婚し、戦争が終わったなら、このダイヤモンドは新たに即位した王に売却してほしい。それ以外の者には渡さないでほしい」

 

 フアンは、ひとかどの人物となるためにイタリアへ行く決心をする。

 

 ナポリに着いたフアンは、「私はイリェスカスの騎士だが、難破して所持品を失った」と宿の主人に説明し、宝石鑑定の専門家であるアントニオ伯爵を紹介してもらう。アントニオは、フアンの持っていたダイヤモンドを多額の現金と交換する。フアンはその金で従者たちを雇う。

 

 アントニオの娘オクタビアは、フアンにひとめ惚れをする。フアンもまたオクタビアに接近する。オクタビアの求婚者レオネーロは嫉妬するが、フアンは首尾よくオクタビアの部屋へ忍び込む。フアンとオクタビアは、フェルナンドから預かったダイヤモンドやその他の財産を持ってスペインへ逃亡する。

 

 フアンとオクタビアの乗った船は難破し、二人はダイヤモンド以外のものをすべて失い、カタルーニャの海岸にたどり着く。フアンは、自分がほんとうは農夫の身分であることをオクタビアに告白し、ダイヤモンドを預かったいきさつも説明する。オクタビアは悩んだ末、彼とともに農村で暮らす決意をする。

 

 アントニオは、娘のオクタビアがフアンとともに逃げたことをレオネーロから知らされる。アントニオは怒り、彼らを追跡する。

 

 故郷イリェスカスの農村へ戻ったフアンは、父親のペドロと妹のカシルダにオクタビアを紹介する。ペドロはフアンに、オクタビアと正式に結婚するよう忠告し、兵士の服を脱いで農夫の服に着替えるよう命じる。

 

 結婚してカトリック両王となったイサベルとフェルナンドが、聖母マリアを礼拝するためにイリェスカスを訪れるという知らせがくる。アントニオとレオネーロがイリェスカスに到着し、フアンを詐欺師だと訴える。彼らはそれを両王に裁いてもらうため、アラゴン王からの手紙を持ってきていた。

 

 オクタビアはフアンに「フェルナンド王へダイヤモンドを売れば、王宮に雇ってもらえるかもしれない」と忠告する。

 

 イサベルとフェルナンドが到着し、式典が始まる。イサベルは、アントニオから渡された手紙を読み、「イリェスカスの騎士フアンが、アントニオ伯爵を侮辱した」と告げる。いっぽうフェルナンドのもとに、「高額のダイヤモンドを呼び売りしている男がいる」という知らせが入る。フェルナンドはその男を呼びよせ、それがフアンであることを認めると彼に感謝する。しかしアントニオ伯爵はフアンに「娘のオクタビアを返せ」と迫る。

 

 そのときペドロが「フアンは私の息子ではなく、ナポリ王に仕えていた貴族の庶子で、私と妻が養育を任されたのです」と告白する。その貴族とは、アントニオ伯爵の死んだ兄弟であることがあきらかになる。伯爵は感動してフアンを抱擁し、甥として、また婿として彼を歓迎すると告げる。カトリック両王がフアンとオクタビアの結婚を祝福して幕となる。