Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

奪還されたブラジル(Brasil restituido, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1625年

種類:史実を基にした歴史劇

補足:ブラジルのサルヴァドール・ダ・バイーアが舞台となる。当時はポルトガル領であった。1624年にオランダがバイーアを攻略したが、翌25年に再びバイーアポルトガルに奪還されている。この劇はその直後の1625年に上演されており、南米におけるカトリック国側の戦勝を扱ったプロパガンダ劇であったと考えられる。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 ドニャ・ギオマールは、ポルトガルの貴族ベルナルドの娘である。彼女は、軍人ドン・ディエゴ・デ・メネセスとひそかに愛し合っていたが、改宗ユダヤ人の血を引く家系であることを理由に、ディエゴから突然の別れを告げられる。

 

 ディエゴの仕打ちを恨んだギオマールは、父のベルナルドにそのことを訴える。家名を傷つけられたと感じたベルナルドは、娘とともに復讐を決意する。

 

 ベルナルドはギオマールに、スペインやポルトガルのユダヤ人たちは異端審問所の審判を逃れて集団でブラジルへ渡り、農場主として暮らしてきたということを話す。スペインの圧政からの解放を望んでいるオランダ人たちが、ユダヤ人たちを支援して軍隊を送ってくれることになっているという。

 

 ベルナルドの元へ、オランダの海軍司令官レオナルドバイーアに到着したという知らせが入る。レオナルドはベルナルドを訪問し、まもなく軍隊が到着するはずだと告げる。

 

 スペイン出身の冒険好きな歩兵マチャードは、城壁の上からオランダ海軍がバイーアに近づいてくるのを目撃し、総督に報告する。総督は、軍備が整っていないことを案じるが、国王への忠誠のために断固としてオランダ軍と戦うことを決意する。ディエゴを初めとする兵士たちは総督とともに、市の城門へ向かう。

 

 しかし時すでに遅く、オランダ軍司令官リカルテとその息子アルベルトは軍勢を率いてバイーア市内に侵入し、市民たちをパニックに陥れる。

 

 リカルテは、バイーア市内部の反乱グループと連携する。反乱グループに加わったギオマールはレオナルドと婚約し、かつての恋人ディエゴへの復讐を誓う。

 

 「ブラジル」「名声」「スペイン国家」を象徴的に表す女性たち(「ブラジル」は先住民の女性の姿)の会話によって、ブラジルを待ち受けている運命が予言される。「ブラジル」はあらたな侵略を嘆き、先住民の男性オンゴルに向かって悲しみを訴える。「名声」は「スペイン国家」に、オランダ軍と戦う艦隊を送るようにと命令する。

 

 オランダ軍に捕えられたマチャードは、先住民たちとともに牢獄から脱出する。マチャードたちによってバイーアの状況が語られる。ギオマールはディエゴを捕えて処刑し、復讐を遂げた。ギオマールはすでにレオナルドと結婚し、その子を妊娠している。バイーアの総督はオランダに送られ、拷問を受けている。ユダヤ人とオランダ人は市内を破壊し、ポルトガル人たちの多くは市外へ脱出した。先住民たちは抵抗を続け、逃げようとする者たちを矢で攻撃し、死体を山に運んで食しているという。

 

 レオナルド率いるオランダ人兵士たちは市外へ出ていき、先住民たちと戦う。マチャードたちは茂みに身を隠し、難を逃れる。先住民たちは伏兵を潜ませてオランダ人たちを襲い、援護に来たリカルテを矢で殺す。アルベルトは父の仇を取ることを誓う。

 

 数カ月後、スペイン・ポルトガル連合艦隊バイーアに到着する。カトリックの信仰」を象徴する女性(スペイン女性の姿)は喜んでそれを迎える。「ブラジル」は丘の上から現状を語る。オランダのバイーア攻略を知ったスペイン国王フェリーペ4世は、ドイツ、フランドル、ミラノ、スペインの連合艦隊を準備し、司令官ドン・マヌエル・デ・メネセスが率いるポルトガルの艦隊とともにバイーアへ向かわせた。カスティーリャの高名な軍人ドン・ファドリーケ・デ・トレドもその軍に加わった。

 

 連合艦隊バイーアに到着し、兵士たちは市の城壁を包囲する。先住民たちと別れて山から降りてきたマチャードは、ファドリーケに会い、ともに戦いたいと申し出る。ファドリーケはマチャードに伝令の任務を与える。

 

 オランダ軍は、市を包囲する連合軍の兵営を攻撃する。マチャードはそれをファドリーケに報告し、ともに戦闘に加わる。

 

 アポロ神と「ブラジル」は、山上から戦闘を眺める。アポロはムーサたちに、この出来事を書物に記して残すようにと命じる。

 

 オランダ軍と連合軍の激しい戦闘が繰り広げられ、多数の犠牲者が出る。「異端」を象徴する女性が現れ、スペインの敗北を確信して、「ブラジル」を挑発する。しかし「ブラジル」はカトリックへの帰依を表明し、フェリーペ4世が異端者たちに勝利するであろうと告げる。

 

 数週間の戦闘が続く。ファドリーケは勝利を早めようと、オランダ軍の要塞の周囲に塹壕を掘らせる。マチャードは危険な任務を与えられて怯えるが、「カトリックの信仰」と「ブラジル」はファドリーケの決断を讃える。

 

 オランダ軍は劣勢にあるにも関わらず抵抗を続け、敵を挑発しようと試みる。レオナルドは、侮辱のシンボルである赤い旗を城壁の上に立てる。それを見たマチャードは義憤にかられ、塹壕からとび出して旗を奪いに行く。首尾よく旗を奪ったマチャードはそれをファドリーケに渡す。ファドリーケはマチャードの行為を賞賛し、報奨として金鎖と勲章を与える。

 

 アルナルドというオランダ人兵士が投降してきて、「オランダ軍の士気は落ちてきている」とファドリーケに告げる。ファドリーケは勝利を確信する。

 

 ファドリーケの軍の強さと犠牲者の増大を見て、レオナルド、アルベルト、ベルナルドらは連合軍への降伏を検討する。しかしベルナルドはスペイン・ポルトガル連合軍の報復を恐れ、また娘ギオマールの名誉の回復は完全にはなされていないと考え、降伏に反対する。

 

 ギオマールは、降伏しようとするレオナルドの意思を知って激怒し、彼を責めたてる。彼女はディエゴを殺したことは過ちであったと考え、絶望する。

 

 ギオマールは、偶然マチャードに出会う。金鎖と勲章をなくしてしまったマチャードは、彼女の護衛として自分を雇ってほしいと交渉する。ギオマールは、自分の置かれた危うい立場を考え、マチャードの申し出を受け入れる。

 

 レオナルドは白旗を掲げて連合軍に降伏する。ファドリーケは、フェリーペ4世の肖像画に向かって助言を求める。ファドリーケはレオナルドに恩赦を言い渡し、「故国へ帰るための三か月分の食料と船舶のほかすべてを放棄し、三時間以内にバイーアから撤退せよ」と命じる。いっぽう、ユダヤ人たちは厳しい罰を受けるために市内に残される。

 

 バイーアの城門が開かれ、オランダ軍が撤退する。マチャードはファドリーケに、ギオマールへの恩赦を願い出る。ギオマールは許される。彼女はマチャードにドブロン金貨で千エスクードを支払う。連合軍はバイーア市内に残された豪華な品物を発見する。

 

 「カトリックの信仰」と「ブラジル」が、ファドリーケの行いを賞賛し、彼に月桂冠を与える場面で幕となる。

 

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フアン・バウティスタ・マイーノ

バイーアの回復》1634-35年

プラド美術館

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