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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

狂えるベラルド(Belardo el furioso)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1594年

種類:古典文学にもとづく牧人劇

補足:牧人劇の形式で書かれているが、若き日のロペとエレーナ・オソリオとの恋を思わせる内容である。古代ギリシャの理想郷アルカディアが舞台となる。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

  羊飼いのフロリペーノレリダーノは、ふたりともハシンタという娘に恋をしている。フロリペーノは10年も彼女に片思いをしていて羊の世話も手につかない。レリダーノは裕福な牧人頭で、高価な品物でハシンタの心をなびかせようとしている。しかし、ハシンタは貧しい羊飼いのベラルドだけを愛している。

 

 ハシンタは、嫉妬しているふりをしてベラルドの本心をたしかめようとする。ベラルドは、自分の恋が誠実なものであることを誓う。二人は抱き合い、ハシンタはベラルドへの恋を死ぬまで貫くと約束する。

 

 ハシンタの叔父ピナルドは、「貧しいベラルドとつき合っていても、何の利益にもならない。恋した相手と結ばれても、飢え死にしては意味がない。おまえは美しいのだから、どんな男でも虜にできる」と言い、裕福で美男子の牧人頭ネモローソとの結婚をハシンタに勧める。ハシンタは、叔父の言葉は理にかなっていると考える。ネモローソは謙虚な態度でハシンタに接し、ハシンタは彼に好感を持つ。

 

 彼らの会話を隠れて聞いていたベラルドは憤慨する。ピナルドとネモローソが去ってから、ベラルドはハシンタの前に姿を現し、「きみを殺してぼくも自殺する」と脅す。

 

 ハシンタは迷いながらも、安定した生活を選んでベラルドに別れを告げる。ベラルドは絶望し、再び自殺を宣言する。ハシンタは失神したふりをし、ベラルドはハシンタを試すためにナイフで切りかかろうとする。ハシンタはとび起きて逃げる。

 

 ベラルドはようやく別れを受け入れるものの、悪態をつきながらハシンタのもとを去る。ハシンタは強気な態度で「女がいったん覚悟を決めたら、怖いものなんかないの。私は自由でいたい」と言う。

 

 レリダーノはフロリペーノに、「ハシンタのことはあきらめてクリスタリーナという女性に恋をするつもりだ」と話す。しかしフロリペーノは、「クリスタリーナもベラルドに惚れこんでいる」と教える。そこへクリスタリーナが家畜を探しに現れ、レリダーノとフロリペーノは彼女を手伝う。

 

 ベラルドは、親友のシラルボとともに、アルカディアを去ってイタリアへ行くことを決意する。裕福なクリスタリーナは、ベラルドに自分の財産を分け与えてやる。ベラルドは、ハシンタからもらった手紙やリボンや髪の毛などを焼き捨てて、アルカディアを去る。

 

 ベラルドはハシンタへの思いを断ち切ろうとするものの、嘆き悲しみながら三カ月を過ごす。彼はシラルボの忠告も聞き入れず、アルカディアへ戻ることにするが、それでもハシンタには会うまいと思い、彼女の肖像画を土に埋める。しかし彼はそのことを後悔する。

 

 ハシンタとの結婚式の前日、ネモローソは彼女に自分の財産のことを自慢する。ハシンタは「あなたが私をむりやり鎖で繫ぎ止めようとする夢を見た」と語り、怖じ気づくピナルドを尻目に、ネモローソに無遠慮に次々と贈り物を要求する。ネモローソは彼女に言われるまま、その日に結婚することになっている彼女の友人マリリスの持参金まで与える約束をする。

 

 アルカディアに戻ったベラルドとシラルボは、ピナルドから「ハシンタとネモローソはすでに結婚した」と聞かされる。ベラルドは怒り狂い、正気を失って、ネモローソと決闘することを宣言する。シラルボは錯乱した友人の姿を見て悲しむ。

 

 フロリペーノとレリダーノは、クリスタリーナを口説こうとするが、二人とも振られてしまう。クリスタリーナは二人をアマリリスの結婚式に誘う。そこへ、槍のかわりに葦の茎を持ち、おかしな格好をしたベラルドが現れる。三人は、正気を失ったベラルドの言葉にうまく調子を合わせてやるが、ベラルドは機嫌を損じて彼らを追いはらってしまう。

 

 ベラルドはネモローソが決闘にやってこなかったことを嘆き、ハシンタが彼を引きとめたのだろうと推測して悲しむ。そこへベラルドと同じ格好をしたシラルボが現れ、ネモローソだと名乗って彼と戦う。シラルボはわざとベラルドに負け、ハシンタは彼に譲ると告げる。ベラルドは満足して去っていく。

 

 ハシンタの友人アマリリスと村人のバートの結婚式が行われる。にぎやかな宴の最中にベラルドが姿を現し、勝利の褒美としてハシンタを要求する。ネモローソは怒って彼を制止する。錯乱したベラルドは羊飼いの杖で結婚式の参列者たち全員に殴りかかり、人々は逃げ去る。ベラルドは独りで勝ち誇ってみせるが、一抹のむなしさを覚える。

 

 ハシンタはベラルドから逃れ、女神パラスの加護を求めるが、ベラルドと鉢合わせしてしまう。ハシンタはベラルドに向かって、「あなたは私を捨てた」と責めたり、「自殺しようとするなんて正気の沙汰ではない」と罵ったりする一方、「それでもあなたが好き」と言って、ベラルドの怒りをそらし、彼から逃れようと試みる。ベラルドが彼女と抱き合おうとすると、彼女はベラルドの注意を空に向けさせ、その隙に逃げだす。

 

 ベラルドはハシンタの姿が消えてしまったのを見てさらに錯乱し、駆けつけたシラルボに「彼女はきっと毒蛇に噛まれて、冥府へ落とされたのだ。ぼくはオルフェウスのように、冥府へ行って彼女に会ってくる」と告げる。シラルボは再びベラルドに調子を合わせ、自分もついていくと申し出る。

 

 ベラルドの父親ガルテリオは、ハシンタのことを魔女と非難し、彼女を捕えて村の牢屋に入れるよう、警吏たちに依頼する。 

 

 シラルボはハシンタにベラルドの状況を伝え、助けを求める。心を動かされたハシンタは、ベラルドを探しに行く。

 

 ガルテリオと警吏たちは、ハシンタを捕えるために彼女の家に行くが、出てきたのはアマリリスとバートだった。彼らの前にネモローソが現れ、「振られた男たちが、振った女を魔女扱いして復讐しようとするのは卑劣な行為だ」と告げてハシンタをかばい、ガルテリオたちを非難する。それでも警吏たちは納得しないので、ネモローソは金をちらつかせて、ようやく彼らを追いはらう。

 

 アマリリスとバートは、ハシンタがシラルボと一緒にベラルドを探しに行ったことをネモローソに告げる。ネモローソは、ハシンタのために多額の金を使ったにもかかわらず、正気を失った男に彼女の心を奪われたと感じて嫉妬を覚える。

 

 シラルボは、冥府への入口だと嘘をついてベラルドを洞窟の前に立たせ、呪文を唱えてみせる。すると、隠れていたハシンタが現れ、冥府から戻ってきたふりをしてベラルドを喜ばせる。抒情的な韻文によって語られるハシンタの愛の言葉を聞き、ベラルドは正気を取り戻す。ベラルドは美しいソネットを歌い、ハシンタと抱き合う。シラルボの勧めで、二人は結婚の約束をする。

 

 隠れて彼らの様子を見ていたネモローソは、嫉妬で正気を失う。その姿を見た警吏たちは、やはりハシンタは魔女だったのだと確信する。ベラルドとハシンタがよりを戻したことを知って、クリスタリーナも錯乱してしまう。さらに、クリスタリーナに片思いをしていたレリダーノとフロリペーノも、彼女のベラルドへの思いを知って正気を失う。狂気がつぎつぎと周囲の人々に伝染していくのを見て警吏たちは当惑する。村人たちは、ハシンタとベラルドが悪いのだと非難する。

 

 ピナルドはハシンタとベラルドの結婚を認め、二人の結婚式が行われる。式の最中に、ネモローソは短剣でベラルドを刺し殺そうとし、クリスタリーナはハシンタを刺し殺そうとする。しかし彼らは同時にお互いの姿を見て、愛する者を守るためにそれを止めようとして争う。人々はネモローソとクリスタリーナを捕えるが、ハシンタとベラルドは二人を自由にしてやってほしいと願い出る。

 

 ベラルドとハシンタはあらためて結婚を宣言する。ネモローソはクリスタリーナに求婚し、クリスタリーナはそれを受け入れる。レリダーノとフロリペーノは警吏の娘たちと結婚することになる。

 

 

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