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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

モロッコの王子の洗礼(Bautismo del príncipe de Marruecos, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1593-1603年

種類:史実にもとづく歴史劇

補足:1578年の「アルカセル・キビールの戦い」におけるポルトガル王セバスティアンの戦死と、モロッコの王子ムレイ・ヘケ(Muley Xeque)のキリスト教への改宗を描いている。ヘケはスペインの宮廷に歓迎されたが、1609年のモリスコ追放ののちはスペインに住みにくくなりイタリアへ移住した。ロペはヘケに捧げるソネットも書いている。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 モロッコ王家の血を引くムレイ・ムハンマドは、オスマン・トルコと手を結んだ身内に国土を奪われ、スペイン王フェリーペ2世に助けを求める。しかしスペインは、フランドルとの戦いで手一杯の状態であった。ムハンマドは次に、フェリーペの甥にあたるポルトガルバスティアの援助を求め、「この戦争に勝てばモロッコ国王の座はそちらに譲る」と提案する。

 

 セバスティアンはムハンマドの申し出に乗り気になるが、家臣たちは反対である。そのときフェリーペからセバスティアンに、グアダルーペで会合を開きたいという手紙が届く。セバスティアンはいったんムハンマドと別れ、グアダルーペへ赴く。

 

  レーラ・ファティマはモロッコ国王マルーコの弟ムレイ・アメットの恋人である。彼女は占い師のセリンダに、モロッコの支配者となるのはムハンマドかアメットかと尋ねる。セリンダは「キリスト教徒とイスラム教徒との戦いでムハンマドは溺死し、アメットが支配者となる」と告げる。

 

 グアダルーペでセバスティアンと会ったフェリーペは、アフリカの戦争に介入しないほうがいいと忠告するが、セバスティアンはすでに戦う決意を固めていた。フェリーペはやむを得ず、一万五千人の兵を援助する約束をする。

 

 レーラ・ファティマはアメットに花冠を贈り、彼はモロッコの王になるだろうと告げる。アメットはレーラと結婚することを約束する。マルーコは、戦争の準備をしなければならないときに恋にうつつを抜かしているのは不謹慎だとアメットを非難する。


 アルカセル・キビールの戦いで、セバスティアン、マルーコ、ムハンマドは戦死する。アメットがモロッコの君主となる。

 

 ムハンマドの遺児ムレイ・ヘケはフェリーペの庇護を受けてポルトガルで養育されたのち、アンダルシア地方のアンドゥハルで暮らす。彼に仕えているのは、モーロ人の高官アルマンソールである。

 

 ヘケと彼の従者サイデは、アンドゥハルで行われているロメリアという祝祭を見る。それは、サンタ・マリア・デ・ラ・カベサと呼ばれる聖母像に捧げられるものであった。キリスト教徒の女性たちと会話をするうちに、ヘケは祝祭に興味を抱き、変装して参加者の中に紛れ込む。ひとりの修道士が彼に、「スペインでは聖母マリアへの崇敬が盛んなのだ」と教える。聖母像を見て、ヘケの心の内に奇妙な変化が起きる。

 

 ヘケは病に倒れる。彼の様子にキリスト教への改宗の兆しを見て取ったアルマンソールは、イスラム教への重大な冒涜であると考え、彼を毒殺しようと企てる。いっぽう、キリスト教徒側はヘケの改宗をすばらしい奇跡とみなす。アンドゥハルの行政長官は、彼を自宅に保護する。夢の中でキリスト教の信仰が勝利する兆しを見たヘケは、自身の改宗が正しいことを確信する。

 

 国王フェリーペは、ヘケの改宗の意思を知り、彼をエル・エスコリアル修道院に呼びよせて洗礼を受けさせる。ヘケはキリスト教徒となり、フェリーペの臣下となることを誓う。

 

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クリストバル・デ・モラーレス

ポルトガル王ドン・セバスティアン》

1572年 プラド美術館

Museo Nacional del Prado