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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

アルバ公爵のラス・バトゥエカス(Batuecas del duque de Alba, las)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1598-1603年

種類:歴史劇

補足:スペインのサラマンカ県にあるラス・バトゥエカス渓谷が舞台となる。現在は自然公園となっており、先史時代の絵画などが発見されている。ロペの時代には、かつてここに文明化されていない人々が住んでいたという伝承(あるいは噂話か)があったらしい。

男装の女性と、その女性に恋する女性が登場する。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 ラス・バトゥエカスは山に囲まれた渓谷である。この地の住人は外の世界を知らず、文明社会と無縁の生活を送っていた。人々は毛皮をまとい、女性は髪を結わず、やや粗野な言葉で話している。

 

 バトゥエカスの住人ヒロートは、タウリーナに恋している。ヒロートはたくましいが粗野な性格であり、タウリーナは彼よりも繊細な性格のミレーノを好ましく思っている。しかしミレーノは、ヒロートとタウリーナが一緒にいるところを見て嫉妬する。

 

 タウリーナは友人のヘラルダに相談する。ヘラルダはヒロートに恋をしている。ヘラルダは、「バトゥエカスは、最も頭の良い人間によって統治されなくてはならない」という古老トリーソの言葉を彼女に伝える。タウリーナとヘラルダは、それぞれ自分の恋する男性が統治者にふさわしいと考え、ミレーノとヒロートを探しに行く。

 

 バトゥエカスの男性たちは、統治者を決めるために話し合いをする。トリーソは、山の外に彼らの知らない人々が住んでいることを確信しており、バトゥエカスの岩の間に古い剣が隠されていること、それはここの住民のための武器であることを周りの者たちに教える。

 

  ミレーノとヒロートが彼らに加わり、一同は別の種族がいるかどうかを確かめるため、山に向かう。ある場所の岩を杖で打つと、洞窟へと通じる扉が開き、その中に槍と盾を持った白骨死体が見つかる。盾には、獅子と城が描かれており、そのまわりに「T.S.D.R」という文字があった。

 

 一同は、「渓谷を探索して、人間がいるという証拠を最も多く見つけ出した者がバトゥエカスの統治者になることにしよう」と決め、それぞれ探検の旅に出ることにする。

 

 アルバ公爵の家臣ドン・フアン・デ・アルセは、公爵家の侍女ブリアンダに恋している。しかし公爵はブリアンダをラミーロ・デ・ラーラと婚約させていた。フアンはブリアンダをつれて公爵邸を抜け出そうと考え、同じく公爵の家臣である友人のメンドに援助を求める。メンドは快く承知する。

 

 ブリアンダは男装し、フアンとメンドに助けられて窓から脱出する。フアンとブリアンダは夫婦となることを宣言し、三人はペーニャ・デ・フランシア(フランスの岩山)と呼ばれる山へと向かう。

 

 ヘラルダは探検に出かけるヒロートに別れを告げ、自分のリボンを愛のしるしとして渡す。

 

 フアン、メンド、ブリアンダは安全な場所を求めてさまよう。メンドは食べ物を探しに行き、フアンは小川のせせらぎの音を聞いて水を汲みに行く。ひとり残されたブリアンダはミレーノに出会う。ミレーノはブリアンダを別の種族の男性と思い、彼女を拉致して仲間たちのもとへ運ぶ。

 

 カトリック王フェルナンドはグラナダの戦いに出発し、カスティーリャの副王にアルバ公爵を任命する。ラミーロはそのことを公爵に伝えるとともにブリアンダとの結婚を願い出る。ブリアンダがフアンとともに出奔したことを聞かされたラミーロは落胆し、グラナダの戦いに参加する決意を固める。

 

 ミレーノにさらわれ、バトゥエカスの人々の前につれてこられたブリアンダは、彼らが文明社会を知らないことに驚く。ブリアンダは彼らにスペインのことや、コロンブスが発見した新大陸のこと、国王フェルナンドのこと、モーロ人たちとの戦争のことや、キリスト教のことなどを教える。

 

 バトゥエカスの人々は、かつてひとりの王が兵士たちをつれてこの山々へと逃れてきたというおぼろげな記憶を伝承していた。ブリアンダは彼らが、数百年前にスペインがイスラム教徒に占領された際、山奥へ身を隠したゴート族の末裔であることを確信する。

 

 ヒロートがフアンをさらってくる。ブリアンダはセリオと名乗り、自分はフアンの兄弟だと説明する。バトゥエカスの人々は、ブリアンダを彼らの王にする。

 

 タウリーナは、男装しているブリアンダに恋をする。彼女は魔術師のアドゥルフォに、ブリアンダの恋心をかきたててほしいと頼む。アドゥルフォは、サテュロスの姿をした悪魔を呼び出す。しかし、600年間バトゥエカスの人々の心を支配してきた悪魔は、ブリアンダとフアンによってもたらされたキリスト教の信仰に恐れをなし、バトゥエカスから逃げていく。悪魔は立ち去る前に、バトゥエカスの人々がアルバ公爵のもとでキリストのしもべになるであろうと予言する。

 

 ヘラルダはメンドに出会い、彼を自宅に招く。ヒロートはそれを知って嫉妬する。

 

 アルバ公爵はグラナダでのモーロ人との戦いに勝利する。ラミーロはそのことを

公爵夫人に伝える。

 

 アルバ公爵は故郷へ帰る前に、巡礼の誓いを果たすためにペーニャ・デ・フランシアに立ち寄る。山のふもとの村人たちは、最近目にした奇妙な人間たちの噂をしている。半ば野獣のようなその人間たちを、村人たちは見つけ出して捕まえようと考える。

 

 フアンとブリアンダは毛皮をまとい、バトゥエカスの人々とともに生活していたが、なんとかアルバ公爵の許しを得てこの地を去りたいと考える。トリーソにタウリーナとの結婚をすすめられたブリアンダは、機転を利かせて、「アルバ公爵の許可がもらえれば結婚する」と返事をする。

 

 メンドは、洞窟の中にあった剣と盾を持ち、アルバ公爵の邸宅をめざして山を越えようとする。アルバ公爵は村人たちとともに山を登り、メンドと出会う。村人たちに追われ、メンドは武器を捨てて逃げる。アルバ公爵はその盾に「750年」という日付と「T.S.D.R」という文字があるのに気づき、国王の元に届けさせる。

 

 ブリアンダは子どもを出産する。彼女を男性だと思っていたバトゥエカスの人々は驚く。フアンは、自分たちの国では男も子どもを産むのだとごまかすが、人々は疑念を抱く。

 

 メンドを追ってきたアルバ公爵が、バトゥエカスの渓谷にやってくる。公爵は、バトゥエカスの人々が温和な性質を持っており、抵抗する様子を見せないことに驚く。公爵はフアンに会うが、あまりにも彼の容貌が変わっているためにそれと気づかない。フアンは公爵に、バトゥエカスの住人をゴート族の末裔として紹介し、住人たちは公爵を自分たちの主人として認める。フアンは自分の正体を明かして許しを乞う。公爵は彼とブリアンダを許し、ともに公爵の家へ戻る。

 

 公爵はバトゥエカスの住民たちすべてに洗礼を授け、聖堂や裁判所などの施設を建てる。メンドが持っていた盾に書かれていた「T.S.D.R」とは、「ロドリゴの甥であるテオドフィロ(Teodófilo, sobrino de Rodrigo)」という意味であり、洞窟の中にあった遺体はゴート族の王族であったことが判明する。