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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

反キリスト(Antecristo, el)

ロペへの帰属:議論の余地あり

執筆年代:1613-1618年

種類:宗教劇

補足:バビロニアが舞台となる。ギリシャ神話における巨人族のひとりティターンが反キリスト(キリストに背く者)として描かれるが、随所にコミカルな場面が見られる。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 毛皮をまとったティターンが登場し、自分は何者なのか、自分の運命はどのようなものなのかと問いかける。

 

 馬に乗った「月」が天から降りてくる。「月」はティターンに彼の名前を教え、彼の生地は「天国の反対」にあること、彼は人でもあり悪魔でもある存在で、ハデス(ギリシャ神話における冥府の神)の息子にして「反キリスト」であり、悪を誕生させる運命にあることを告げる。『ヨハネの黙示録』に書かれているように、彼は三年半のあいだ地上に混乱をもたらし、残虐な罪を犯しつづけるであろうと「月」は予言する。

 

 「月」が去ると、農夫のバウリーンが現れる。彼は、飼っている二頭のロバが死んでしまったと嘆きながら、ティターンに助けを求める。ティターンは尊大な態度で、自分は「至高の存在であり、世界の創造主」であると宣言する。

 

 場面が切り替わる。舞台の片側からバビロニアの王子が登場し、反対側から彼の恋人ルーナが婦人たちをつれて登場する(この「ルーナ(Luna)」は、最初に登場する「月(Luna)」とは別人格と思われるので、区別して表記する)。舞台中央には台座があり、カーテンが閉じられている。彼らは、自分たちが真の神とあがめる存在が現れるのを待つ。王子はギリシャの神々を信仰しており、ルーナはユダヤ教徒である。

 

 カーテンが開き、玉座についたティターンが現れる。傍らには子どもの姿の天使が立ち、バウリーンがひざまずいている。ティターンが自分を「真の神」だと宣言すると、天使は驚いてそれを否定し、ティターンに追い払われる。バウリーンは、自分のロバを生き返らせてくれたティターンに賞賛の言葉を述べる。バビロニアの王子とルーナも、それまでの信仰を捨て、ティターンを神とみなす。

 

 ティターンとバウリーンの姿が消える。キリスト教徒のリドーロルフィーノの会話が入る。彼らはティターンが「反キリスト」に違いないと考える。

 

 大勢の人々が、歌を歌いながらティターンを祝福し、彼の前にひざまずく。ティターンは、貧しさを愛し禁欲を説くキリストを激しく非難し、人々の希望をすべてかなえてみせる。王子には跡継ぎの誕生が約束され、ルーナには不滅の美しさが与えられ、博打をする者には幸運が与えられる。

 

 彼らが去った後、リドーロとルフィーノはあらためてキリストへの信仰を誓う。彼らの前に、旧約聖書の預言者エノクエリヤが現れる。彼らはリドーロとルフィーノに、キリストを信じ続けるようにと告げて去る。

 

 ティターンは、男性たちがルーナと交わらないことを非難し、みずからバビロニアの王子の姿になってルーナを口説く。そこへ本物の王子が現れたので、ティターンは姿を消す。怪しむ二人の前にティターンは反キリストの姿で現れ、自分にできないことは何一つないのだと告げる。王子とルーナは畏れを抱き、彼の前にひれ伏す。ティターンはルーナと交わるために、邪魔な王子を殺そうと考える。

 

 ペルシャ、ドイツ、ローマ、フランス、スペイン、エチオピア、インドなどから使者たちがやってくる。彼らはティターンを礼賛する。ティターンが去った後、ルーナはインドとスキュティアからきた女性の使者たちの美しさを賞賛する。バウリーンがやってくる。ルーナは彼に黄道十二宮(十二か月の星座)について説明する。

 

 ティターンが現れ、ルーナの目の前で王子を殺してしまう。ルーナの嘆きをよそに、ティターンはルーナを自分のものにできると喜ぶ。

 

 エリヤとティターンの議論が始まる。ティターンはキリストをただの人間であると言い、エリヤはそれに反論する。ティターンは自分こそ創造主であると主張して王子を蘇生させるが、幻影として示すことしかできず、それに対してエリヤは実体を持った王子を蘇生させる。生き返った王子は、エリヤこそが真実を述べる預言者だと認識する。

 

 ティターンは、「自分は死んで三日目に復活する」と予言し、そのとおりにしてみせる。人々はティターンを崇拝し、エノクとエリヤは捕えられる。ティターンは二人の子どもの前で彼らを殺すが、子どもたちはティターンを「反キリスト」だと断言する。

 

 バウリーンの妻は、ティターンのまやかしを見抜き、彼に騙されていたことを悔い改めるようバウリーンを諭す。ティターンを支持する人々は、エノクとエリヤが死んでしまったのを見て、キリスト教徒たちを嘲笑する。

 

 ティターンは、エノクとエリヤの遺体に向かって、生き返って信仰宣言をしてみろとからかう。すると二人はすぐに蘇生して立ち上がり、キリストへの信仰を宣言する。彼らはティターンを反キリストだと主張し、人々はティターンを殺そうと叫ぶ。ティターンは自らの力で昇天してみせようとするが、雲に乗って降りてきた天使が剣でティターンを刺し、奈落の底へ落とす。「ティターンは偽預言者だった、キリストが真の神である」という人々の台詞で幕となる。