Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

ハンガリーの野獣(Animal de Hungría, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1608-1612年

種類:架空の宮廷劇

補足:野獣に扮した女性と高貴な男性との恋の葛藤が描かれる。男装の女性が描かれる。17世紀初頭に出版された詩集に、「ハンガリーの山中に現れた怪物のような生物」に言及しているものがあり、ロペはこれにヒントを得たと考えられている。2015年にラ・ポルトローナ劇団によってカリフォルニア大学デーヴィス校ワイアット・シアターで上演された。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

 テオドシアは、かつてハンガリーの王妃だったが、今は誰もが彼女は死んでしまったと思っている。彼女はハンガリー山中に棲む「野獣」として恐れられる存在になり、農民たちから食べ物を奪って生きていた。

 

 野獣を殺そうとやってきた若い貴族の男ラウロは、テオドシアが人間であることを知り、彼女の身の上話を聞く。

 

 ・・・《テオドシアはイングランドの王女で、ハンガリー国王プリミスラオと結婚するためにやってきた。彼女は妹のファウスティーナをともにつれていくことを希望したのだが、それが不幸の始まりだった。

 

 テオドシアとともにハンガリー王宮にやってきたファウスティーナは、次第に王妃の座をねらうようになった。彼女は「テオドシアがかつての恋人のスコットランド国王と共謀してプリミスラオを暗殺しようとしている」とプリミスラオに嘘を言った。プリミスラオは怒り、テオドシアを暗殺する決心をした。

 

 プリミスラオは、「テオドシアを山中に置き去りにして、野獣の餌食にしろ」と家臣に命令した。しかしテオドシアは獣の毛皮を身にまとい、みずから野獣のふりをすることで難を逃れた。

 

 テオドシアは死んだものとされ、プリミスラオはファウスティーナと再婚した。二人の間には次々と子どもが生まれたが、みな1歳になる前に死んでしまった。現在ファウスティーナは妊娠しており、次こそは世継ぎが生まれるようにと期待されている。》・・・

 

 テオドシアの身の上話を聞いたラウロは、彼女の秘密を誰にもあかさないことを誓い、彼女の幸運を祈って別れる。

 

 テオドシアの棲む山のふもとの村へ、プリミスラオがファウスティーナと家臣をつれて狩りをしにやってくる。村人たちは、自分たちを困らせている野獣のことを知らせる。プリミスラオは、その野獣をしとめようと意気込む。

 

 プリミスラオが狩りに行った後、ファウスティーナの陣痛が始まる。彼女は女の子を出産する。ひそかに彼女への復讐の機会をうかがっていたテオドシアは、生まれたばかりの赤ん坊を奪って山へ逃れる。

 

 同じ日に、スペインからやってきた三人の騎士たちが、テオドシアの棲む山の中に、フェリーペという名の幼い男の子を置き去りにしていく。フェリーペはバルセロナ伯爵の娘と、ナポリの王子との間に生まれた非嫡出子で、伯爵の命令により捨てられたのだった。

 

 フェリーペは険しい岩山を昇りながら必死に助けを求める。ラウロが彼を助け、事情を聞く。ラウロはフェリーペの純真さと聡明さに心を打たれ、いずれバルセロナ伯が彼を迎えに来ることを祈りながら、彼を手元に引き取って育てることにする。

 

 20年が経過する。テオドシアはファウスティーナの産んだ女の子にロサウラという名を付け、自分の娘として育てていた。ロサウラもまたテオドシア同様、野獣のような生活を送っており、テオドシアはロサウラを全力で守っていた。

 

 ロサウラは成長とともに知恵がつき、自分の父親のことを知りたいと思うようになる。また、ロサウラはフェリーペが水浴びをしているところを偶然目撃し、彼に強い関心を抱く。テオドシアは危機感を抱き、ロサウラにいかなる人間とも接触しないように言い渡す。

 

 ラウロは、立派に成長したフェリーペにスペインへ帰ることを勧めるが、フェリーペは乗り気でない。そこへロサウラが、テオドシアの目を逃れてフェリーペを見にやってくる。フェリーペはロサウラの異様な姿に驚くが、彼女の美しさに惹かれる。

 

 ロサウラは、シルバーナという農家の娘からフェリーペのことを聞き出そうとする。シルバーナはフェリーペに恋しており、そのことを彼女の口から聞いたロサウラは嫉妬して彼女を攻撃してしまう。

 

 村人たちは団結して、シルバーナを襲った野獣を捕えようとする。フェリーペはロサウラを守ろうとして、村人のひとりを誤って殺してしまい、捕えられる。

 

 司法官と村人たちの前でフェリーペが裁かれている中、ロサウラがフェリーペを助けようと棒を持って現れる。フェリーペは彼女が殺されることを恐れ、抵抗しないよう彼女に懇願する。ラウロが嘆く中、フェリーペとロサウラは村人たちによって王宮へつれていかれる。

 

 ロサウラは、「美しき野獣」とみなされ、王宮の回廊で見世物にされる。プリミスラオはロサウラの世話係を探す。テオドシアは農夫の姿に変装し、うまくその立場を手に入れる。

 

 新しいバルセロナ伯爵(フェリーペの実の父親)からの使者が王宮に現れ、「かつてハンガリーの地に捨てられ、現在は成人しているはずの息子を探すため協力してほしい」という伯爵の意思をプリミスラオに伝える。それを聞いたプリミスラオは、ファウスティーナとともに、自分たちの娘が野獣に奪われたことを思い出して深く悲しむ。

 

 二人の悲しむ様子を見たテオドシアは、ロサウラが彼らの娘であることを告白しようとする。しかしそこへ、「イングランド国王(テオドシアとファウスティーナの父親)が、スコットランド国王とともに軍を率いて、テオドシアの死に復讐するため、ハンガリーへ攻め込もうとしている」という知らせが入る。

 

 さらに、フェリーペの処刑を求める書類がプリミスラオの元に届き、彼はそれに署名する。ロサウラはフェリーペの処刑を阻止しようと、檻から脱出する。

 

 ラウロはプリミスラオに、フェリーペの恩赦を願い出ようとする。ロサウラはフェリーペを救い出そうとするが、捕まってしまう。

 

 プリミスラオは、かつてファウスティーナが「テオドシアがあなたを殺そうとしている」と言ったのは嘘だったのではないかと疑い始める。自分の立場が危うくなったと感じたファウスティーナは、家臣のひとりと共謀してプリミスラオを毒殺しようとする。

 

 ラウロは、プリミスラオとバルセロナ伯爵の使者の前で、自分が育てたフェリーペこそが、バルセロナ伯爵の息子であることを告白する。プリミスラオはフェリーペの処刑を中止し、王宮へ呼んで歓迎する。ロサウラもつれてこられるが、彼女は野獣として柱につながれる。

 

 ファウスティーナの企みを知ったテオドシアは、匿名の手紙をプリミスラオに届け、身の危険を知らせる。同時に、王宮へイングランドスコットランドの連合軍が攻め入ってくる。彼らによって、ファウスティーナがかつてテオドシアを殺そうとし、今またプリミスラオを殺そうとしていることが暴露される。

 

 テオドシアはプリミスラオの前で、自分とロサウラの正体を明かす。イングランド国王は、テオドシアが生きていたことを喜ぶ。プリミスラオはテオドシアをふたたび王妃として迎える。フェリーペとロサウラは婚約し、ともにスペインへ出発する。ファウスティーナは罪を許され、修道院へ入る。

 


"El animal de Hungría" by La Poltrona