Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

マドリードの城塞主(アルカイデ)(Alcaide de Madrid, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1599年

種類:伝説を盛り込んだ歴史劇

補足:宗教の異なる相手との恋の葛藤が描かれる。もとになっているのは、8世紀にマドリードの城塞主ドン・グラシアン・ラミレスのもとで《アトーチャの聖母像》が起こしたとされる奇跡の伝説であるが、時代はおそらくアルフォンソ6世がマドリードおよびトレドをイスラム教徒との戦いで征服した1085年頃に設定されている。

参照元

ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

 

  舞台は中世のスペイン。当時、トレドはモーロ人(アフリカ系イスラム教徒)の王の支配下にあった。王は、甥のタリーフェとともに、マドリードを攻めようとしていた。

 

 タリーフェは王女セリーマを愛しているのだが、いつも冷たくあしらわれることを悲しんでいる。セリーマは捕虜になっているキリスト教徒の騎士ドン・フェルナンド・デ・ルハンにひそかに恋をしていた。

 

 セリーマは、父とタリーフェが戦闘に行っている間に自分もキリスト教徒になるから、ともにトレドを征服しないかとフェルナンドを誘惑する。しかしフェルナンドは、キリスト教徒は裏切りによる勝利など望まないと言ってそれを拒否する。フェルナンドは、マドリード城塞主の娘レオノールと婚約していた。セリーマはレオノールを亡きものにしようと企み、マドリードへ出発しようとしているタリーフェにわざと甘い言葉をかけ、レオノールを捕虜にしてきてほしいと頼む。

 

 タリーフェはマドリードへ向かう途中、キリスト教徒の騎士ドン・ロペ・デ・メンドーサを捕虜にする。ロペはレオノールと婚約するためにマドリードへ行くところだった。フェルナンドが捕虜になって半年たち、生死不明なので、城塞主はフェルナンドをあきらめ、レオノールをロペと結婚させようとしていたのである。

 

 タリーフェは、ロペを利用してレオノールを捕虜にしようと、マドリード城塞主に救援を求める手紙をロペに書かせ、みずから使者のふりをしてそれを届けに行く。

 

 マドリードでは、城塞主がロペの身を心配し、レオノールとその妹のエルビラがフェルナンドの無事を祈っていた。そこへ、ロペからの手紙が届けられる。「自分は捕まったが、軍のリーダーであるタリーフェがわざと戦いに負けてキリスト教徒側の捕虜になるから、ロペとの交換を王に求めろ」という内容だった。しかし城塞主はそれを信用せず、使者(実はタリーフェ)を捕虜にして牢に閉じ込めてしまったので、タリーフェの計画は失敗する。

 

 トレドで捕虜になっているフェルナンドは、レオノールがロペと婚約することを知り、絶望して自殺しようとする。セリーマは、自分をマドリードにつれていってくれるならここから解放するとフェルナンドにもちかけ、フェルナンドをモーロ人に変装させてトレドから脱出する。

 

 マドリードで捕虜になっているタリーフェは、レオノールに自分の正体を明かす。彼は、自分を逃がしてくれればフェルナンドを解放すると彼女にもちかける。レオノールはタリーフェをキリスト教徒に変装させて逃がす。

 

 フェルナンドとセリーマは、マドリードを包囲しているモーロ人たちに出会う。モーロ人たちはフェルナンドを味方だと思い、ロペを捕えたことや、タリーフェがいなくなったことなどを話す。

 

 フェルナンドは、恋敵ではあるが同じキリスト教徒であるロペを助けようと決心する。それを聞いたセリーマは、モーロ人たちに自分が彼らの王女であることを明かし、タリーフェがいなくなったのは、彼が国王に謀反を起こしたからだという話をでっちあげる。「タリーフェはひそかにトレドへ戻り、王がいない間にトレドをのっとるつもりだ。自分はそれを王に知らせるために来た。ロペを見張るのは自分に任せて王とともにトレドへ急いで向かってほしい」というセリーマの言葉にモーロ人兵士たちは騙され、王とともにトレドへ引き返す。

 

 ロペはフェルナンドがレオノールの元婚約者であったことを知ると、自分を助けたのは恩を着せてレオノールをあきらめさせるためだったのだろうとフェルナンドを責め、二人はけんかを始める。そこへ城塞からひそかに抜け出してきたタリーフェが現れる。タリーフェはキリスト教徒に変装しているのでロペに加勢し、セリーマとモーロ兵は、モーロ人に変装しているフェルナンドに加勢する。しかし、徐々に彼らはお互いの正体に気づき始める。

 

 フェルナンドはタリーフェを怒らせないために、「セリーマはタリーフェに会いに来た。自分は護衛としてついてきたのだ」と嘘をつく。タリーフェはフェルナンドに「自分はレオノールとの約束でフェルナンドを解放しに来たのだ」と嘘をつく。タリーフェはロペを解放することには難色を示すが、彼の高潔さを見込んで結局解放してやることにする。タリーフェとセリーマはトレドへ、フェルナンドとロペはマドリードへと戻る。

 

 城塞主はフェルナンドとロペが無事に戻ってきたことを喜び、レオノールと結婚するのがどちらかという問題は先送りにして、トレドへ引き返していったモーロ人たちを追跡することにする。

 

 トレドでは、タリーフェが謀反を起こしたというのが嘘であるということがわかり、モーロ人たちはそれをキリスト教徒たちの陰謀であろうと結論する。王はタリーフェを後継者に任命する。タリーフェは、キリスト教徒たちに奪われた軍旗を取り戻すため、再びマドリードへ向かう。

 

 マドリードでは、礼拝堂の中で城塞主たちが、「アトーチャの聖母像」(現在もマドリードに残されている中世の聖母像)に祈りを捧げている。そこへ兵がやってきて、モーロ人たちが戻って来たことを告げる。

 

 セリーマはフェルナンドのことをあきらめきれず、レオノールを捕虜にするという約束を守らなかったことでタリーフェを責める。タリーフェはセリーマのために今度こそその約束を果たすと誓う。

 

 モーロ人たちはマドリードを包囲する。キリスト教徒たちはアトーチャの聖母を描いた軍旗を掲げて応戦する。数で勝るモーロ人たちは城壁に昇り、マドリードに攻め込む。城塞主は戦闘を中止させ、聖母の加護を祈る。

 

 夜になってモーロ人たちは退却し、城塞主はレオノールとフェルナンド、エルビラとロペを婚約させる。城壁の前に突然セリーマが現れ、フェルナンドの愛している女性がどれほど美しい人なのかを見たいと望む。フェルナンドとレオノールの婚約を見たセリーマは、自分の恋が終わったことを認める。

 

 城塞主はマドリードの陥落が近いことを予感し、娘たちを敵の手に渡す前にひそかに自らの手で殺そうと決心する。レオノールとエルビラは父の心を察し、進んで身を差し出す。

 

 城塞主は娘たちの遺体を聖母に捧げ、戦場に赴く。すると光り輝く聖母が出現し、城塞主とともにモーロ人たちと戦う。キリスト教徒たちは劇的な勝利をおさめる。

 

 セリーマとタリーフェは捕虜となるが、キリスト教徒に改宗することを望み、解放されて夫婦となる。

 

 城塞主は娘たちを殺したことを告白し、深く悲しむ。しかし聖母像の祭壇のカーテンが開くと、生き返ったレオノールとエルビラが現れる。人々は奇跡が起きたことを喜び、聖母を賛美して幕となる。