Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

バトンタッチ?

ミラ・デ・アメスクア《悪魔の奴隷》

 ラ・マキナ・レアルによる人形劇の告知 

タラベラ・デ・ラ・レイナでの上演 2010年

Ayto. de Talavera de la Reina: TEATRO: EL ESCLAVO DEL DEMONIO

 

 『日本の殉教者たち』は現在、厳密にはロペが未完成のまま残したものを、別の劇作家アントニオ・ミラ・デ・アメスクア(Antonio Mira de Amescua)が仕上げたものとみなされているようです。マドリード国立国会図書館のページで検索してみると、作者はミラ・デ・アメスクアとなっており、ロペの名前がついたページとミラ・デ・アメスクアの名前がついたページが存在するようです。直筆原稿ではなく、1637年にリスボンで作られたコピーだとのこと。表紙に書かれたタイトルは『日本の最初の殉教者たち(Los primeros mártires del Japón)』ですが、史実と異なるためか、図書館に登録されているタイトルは『日本の殉教者たち(Los mártires del Japón)』になっています。

 

 ミラ・デ・アメスクア(1574?-1644)は、ロペのスタイルを踏襲した劇作家のひとりで、彼の作品の邦訳では『悪魔の奴隷』(牛島信明編訳『スペイン黄金世紀演劇集』名古屋大学出版会、2003年所収)があります。

 

 私が翻訳するにあたって参照したテキストは、1965年にロペの作品として出版されたものに基づいていますが、ミラ・デ・アメスクア作として2009年に出版されたものにもとづくテキストでは、若干の違いが見られます。第一幕の終わりにタイコーの長い独白があり、ラスト近くでタイコーとキルドラが和解する場面があります。なぜかここにネレアが登場しています。(ネレアは死んでいなかったのでしょうか?原文にはト書きがないので、生きていた可能性もなくはないのですが)

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 第三幕は、おそらくほとんどがミラ・デ・アメスクアの手になるものでしょう。キルドラとタイコーの和解の場面では、「女を信用したからこうなったのだ」とアルカイデから手厳しく突き放されたタイコーが、もう二度とキルドラを信用すまいと思い、キルドラの愛の言葉を無視し続けるのですが、キルドラを信じろと忠告するネレアと、崖から身を投げようとするキルドラにほだされて(?)結局は誤解を解くこともないままキルドラと仲直りします。

 

 複数の研究者の意見を総合すると、かねてから豊臣秀頼によるキリスト教保護に期待していたスペインの修道会が、アロンソ・ナバレーテの殉教を機にロペにコメディアを作らせようとしたものの、秀頼の死を知ったロペはあまり筆がのらず、未完成のまま放り出してしまった。それをミラ・デ・アメスクアが引き継いだものの、あまり出来は良くなくて、上演はされたかもしれないけれど、出版されるには至らなかった、というところでしょうか。

 

 ただ、『日本の殉教者たち』というタイトルのコメディアが、1619年にフィリピンのマニラで上演された記録があるそうです。本作かどうかはわかりませんが、どんな人が出演したのだろう、と想像力をかき立てられます。

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