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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

バレンシアの月

バレンシアのらんちき騒ぎ』広告

メキシコ、モレリアでの上演 2008年

Tenepal de CACCINI: 31. TEATRO, Los locos de...

 

ピサーノ あの人を檻に入れないのはまずいですよ。
 精神病患者をおとなしくさせるには、
 閉じ込めておくほうがいいんです。
バレリオ いまは落ちついているから、大丈夫だよ。
 満月から新月にかわる時期だからね(第一幕)
 

バレンシアのらんちき騒ぎ(2/12) - Buenaguarda: las comedias de Lope de Vega

 

 当時、精神病患者の発作は月の周期に関係があると医学的にも信じられていたようです。

 1611年に出版されたセバスティアン・デ・コバルビアスの『スペイン語宝典Tesoro de la lengua castellana o española』の「月luna」の項目の中に、次のような説明があります。

「慣用句:『月がかまどの上にあるEstar la luna sobre el horno』;精神病患者が激しく興奮している状態のときに使われる。通常、その状態になるのは満月の時期である。ここでは、人間の頭部のことを「かまど」とみなしている。頭部はかまどのような(丸い)形をしており、その時期はそこに大いに痛みを感じるからである。こうした理由で、月の周期によって発作を起こす精神病患者たちはルナティコスlunáticosと呼ばれる。」

 

 月が人間の精神に影響を与えるという考えは、古くからヨーロッパ全体に広まっていたようです。ウルガータ聖書(ラテン語訳聖書)の『マタイによる福音書』では、てんかんに苦しんでいる人がlunaticusと表現されています。ロペの生きていた時代でも、まだ月の周期が人体に影響を及ぼすと信じられていたのでしょう。

 

 精神疾患とはおそらく関係ないのでしょうが、現在のスペインには、"quedarse a la luna de Valencia" (バレンシアの月にとどまる)という慣用句があります。「がっかりする」という意味です。一説によると、かつてバレンシアは夜になると城壁の門が閉められてしまったので、遅く到着した旅人は城壁の外で夜を越さなくてはならなかったからだとか。

 フロリアーノはサラゴサから徒歩でバレンシアまで逃げてきていましたが、閉めだされなくてよかったですね。