Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

嫉妬が取り持つ愛

バレンシアのらんちき騒ぎ』

バレンシア自治州演劇センターでの上演、2011年

“Los locos de Valencia” llegan a la ciudad | uValencia.Info

 

フロリアーノ (傍白)
 嫉妬よ、
 おまえは最高の取り持ち役だな!
 おまえは愛を増幅させる。
 だれだろう?おまえをアモルの子どもなどと呼んだのは。
 むしろ、アモルの父親と呼ぶべきだ。
 おまえは何度でも愛を生みだすんだから。(第一幕)

 

バレンシアのらんちき騒ぎ(5/12) - Buenaguarda: las comedias de Lope de Vega

 

 ロペは『バレンシアのらんちき騒ぎ』のほか、『農場の番犬』でも「嫉妬が愛を生みだす」というテーマについて登場人物たちに語らせています。

 

 ディアナ 〔*テオドーロに手紙を見せながら〕
 この女性は、私がにらんだところ、
 相手の男性を気に入ってはいたけれど、
 特に好きだという訳でもなかった。
 ところが、他の女の愛に身を焦がしているところを見て、
 ムラムラと嫉妬が芽生え、愛するようになったんだと思うの。
 あり得るわよね?
テオドーロ あり得ると思います。
 しかし、奥様、
 その嫉妬もまた何かのきっかけから生まれたもので、
 そのきっかけというのが愛だったのです。
 原因は結果からは生まれません。
 結果が原因から生まれるのです。
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ディアナ (愛は嫉妬で荒々しく目を覚ましたわ。)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(稲本健二訳『農場の番犬』

牛島信明編訳『スペイン黄金世紀演劇集』(名古屋大学出版会、2003年)に所収〕)

 

 テオドーロの言葉は一見冷静なものに思えますが、彼の思惑としてはおそらく、ディアナに「つまりあなたはもともと私のことが好きだったってことですよ」と言いたいのでしょう(ディアナは自分の友人の女性の話だということにして、テオドーロに自分の心境を明かしているのです)。ディアナの秘書という立場ですから、本心はとても口にできないのでしょうが。

 ロペは嫉妬を使って、登場人物の心の底に眠っている恋心を刺激し、目覚めさせます。このあたりは、残酷なほど容赦ないです。しかし嫉妬をそれほど醜くは描いていません。直情的で、健全な嫉妬という感じです。

 フロリアーノに軽くあしらわれてしまうフェードラとライダが互いに嫉妬する様子も、どことなく微笑ましいです。ほんとうは仲の良い二人なのでしょうね。

 

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