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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

『オルメードの騎士』の読み方

ロペ・デ・ベガについて②作品(コメディア) ¿Quién es Lope? sus obras dramáticas

El Cauallero de Olmedo | Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes

ロペ・デ・ベガ戯曲集第24巻』1641年

『オルメードの騎士』冒頭ページ

El Cauallero de Olmedo | Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes

 

  ロペ・デ・ベガの戯曲を邦訳で読んでみよう、と思って最初に選ぶなら、私は『フエンテ・オベフーナ』とか『農場の番犬』のほうをおすすめします。『オルメードの騎士』から入ると、なんだかがっかりしてしまうのではないかと思うのです。「ふーん、これがロペの劇なのか。まあこんなものか」と感じて、それ以外のロペの作品を読む気をなくしてしまったらもったいないと、余計なお世話かもしれませんが、心配しています。

 『オルメードの騎士』の良さというのは、他のロペの作品を読んでからのほうがよくわかるだろうと思うからです。ロペというのは、自分は大衆を喜ばせるエンターテイナーだと公言していた劇作家で、最後まで飽きさせない筋書きを作るのがたいへんうまい人です。『オルメードの騎士』は、そういう劇をたくさん書いてきたロペが、あえてその技術を封印して、初めから結末のわかっている物語をとりあげた作品なのです。そこを把握しないで読むと、筋書きは単純だし、悲劇の伏線がわかりやすすぎて先が読めてしまうし、人物も類型的でつまらない、と感じてしまうかもしれません。

 

 もちろん邦訳には、『オルメードの騎士』の物語が当時の歌をもとにして書かれたものであり、当時の観客は主人公が死ぬことをみな最初から知っていた、という解説が書かれています。しかし、それにしてもドン・アロンソはみずから不幸を招きよせているようで、その悲劇にあまり共感できない、というのが一般的な感想かもしれません。

 

 いくつかの作品を読んでみると、ロペが創造する男性主人公の性格は様々ですが、基本的には優れた愛の行動者です。ドン・アロンソはその理想的な形であるように思えます。彼は愛に生きて死ぬべく創造された人物であり、さながらコメディアという祭壇に捧げられた生贄のようです。自分の心を支配する悲しみを吐露するドン・アロンソの台詞は、結末を決められてしまった登場人物の嘆きにも聞こえるし、人間の孤独そのものを嘆くものにも感じられます。

 

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スペイン黄金世紀演劇集

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オルメードの騎士 (岩波文庫)

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