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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

ロペと猫

『ガトマキア(猫の戦争)』

ロペ・デ・ベガ原作

エクトール・マヌエル・ビダル監督による舞台作品(ウルグアイ、2011年)

Podcast: El Garagje de UNI Radio, programa 7: GATOMAQUIA : UNI Radio

 

 

 『ばかなお嬢様』の中で、侍女のクララが主人のフィネアに飼い猫の出産を知らせる場面があります(『ばかなお嬢様』2を参照)。クララは猫たちにそれぞれ名前をつけて、まるで自分が見てきたかのように猫の出産にまつわるイベントを面白おかしく描写し、フィネアを楽しませます。クララ役にはユーモラスで長い台詞がいくつかありますが、たぶん韻文をリズミカルに語ったり歌ったりできる女優が演じていたのでしょう。

 この台詞は、劇の終盤でフィネアが猫を飼っている屋根裏部屋にラウレンシオを隠すという展開の伏線になっているわけですが、ロペは猫たちの世界を実に楽しそうに描写しています。ロペ自身、猫が好きでその生態に興味をもっていたことを感じさせる台詞です。


クララ 「あーっ!うーっ!あんた、もう生まれるわ!」
 オシキモーチョ(*団子鼻の意。ネコの名)は跳ね起きて、
 親類縁者を呼び集めた。
 連中はモリスコ(イスラム教からの改宗者)かもね。
 お祈りの声はソプラノみたいな超高音。


 隣の家の屋根や棟やテラスから、
 親類や友人たちがみんな、
 大喜びで駆け下りてくる。
 その名はそれぞれラミコーラ、アラニサルド、
 マルフス、マラーマオ、ミシロ、
 トゥンバオリン、ミーコ、ミトゥーリオ
 ラビコルト、サパキルド。

 

 猫たちの名前もユニークです。「ラミコーラ」はラメール(なめる)、「アラニサルド」はアラニャール(ひっかく)という動詞から作られた名前のようですし、「マラーマオ」はそのまま「発情期の猫の泣き声」、「ラビコルト」は「尾が短い」という意味です。

 「サパキルド」という名前は、ロペが死の前年に書いた『ガトマキア(猫の戦争)』という滑稽な叙事詩で再び取り上げられ、ヒロインの猫「サパキルダ」となりました。『ガトマキア』はまさに猫たちが主人公の恋愛劇で、コケティッシュな雌猫のサパキルダをめぐって二匹の雄猫が激しく争うというものです。ミュージカルの『キャッツ』とは少し趣が違いますが、愛と嫉妬に彩られたロペ流の猫版恋愛物語といえるでしょう。