Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

ト書きは最低限

ロペ・デ・ベガ戯曲集第14巻』(1620年刊行)より

バレンシア寡婦』第一幕のページ

(Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes)

 

 ロペの戯曲では、ト書きがかなり少ないです。早書きのロペにとって、いちいちト書きを書いている間が惜しかったのかもしれません。したがって、状況が読み取りにくい場合がしばしばあります。それだけでなく、17世紀に印刷されたロペの戯曲集を見ても、人物名はギリギリ判別できる字数にまで省略されていますし、短い台詞だと人物がかわっても改行せずに書かれることもあり、今の印刷物と比べるとかなり読みにくいです。

 

 『ばかなお嬢様』では、ラウレンシオと抱き合ったことをオタービオに叱られたフィネアが、ラウレンシオに「抱き離れる(desabrazar)方法を知らない?」と尋ねる場面があります(カテゴリー『ばかなお嬢様』の7を参照)。「抱く(abrazar)」に否定の意味の接頭辞desをつけたこんな動詞は存在しないので、ラウレンシオがどうやって「抱き離れ」たのか、推測するしかありません。普通はラウレンシオがフィネアを抱いてから腕をはなして「抱き離れた」ことにするようです。しかし、ここはラウレンシオがフィネアの無邪気さを愛しく思う場面なので、腕をはなしたように見せてから再びやさしく抱きしめる、という現代的な演出もあります。

 

チャラ男の誤算 - buenaguarda

 

 また、最後のニーセの台詞から、セリアがトゥリーンを好きになっていたことがわかるのですが、それを思わせるような台詞をセリアはここまで一度も発していません。ですから上演するときは、セリア役の女優は台詞を使わずに身ぶりや表情などでトゥリーンを好きになったことを表したのかもしれません。

 

 ロペは「台詞と最低限のト書きだけ提供するから、あとは自由に演技・演出してほしい」という意思を示したのかもしれませんが、そのとおりに翻訳すると、あまりにもそっけない文章になってしまうのが悩みの種です。忠実な訳とはいえないかもしれませんが、私は「ここはこういう動作をしながら言うのだろう」と推測しながら、適宜ト書きを補っています。ご了承ください。