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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

『日本の殉教者たち』とは

『日本の殉教者たち』 (Los primeros mártires de Japón)

『日本の殉教者たち』は、『日本の最初の殉教者たち(Los primeros mártires de Japón )』というのが正確な題ですが、歴史的事実とは異なるため、あえて「最初の」という言葉は削りました。この戯曲に登場する実在のドミニコ会アロンソ・ナバレーテは、1617年に長崎で殉教しており、今日ではカトリック教会で福者とされています。おそらく、彼の殉教をたたえる目的でこの戯曲が注文されたのでしょう。しかし、1597年にはすでに日本26聖人が殉教していますから、「日本の最初の殉教者たち」と呼ぶのは不適切な気がします。

 この戯曲はロペの生前には刊行されず、草稿が残されていますが、他者の手が加えられている箇所もあるようです。ストーリー展開にやや不自然なところがあり、完成度はあまり高くありません。訳すにあたり、適宜修正し、欠落があると思われる部分には補足をつけました。

 ロペは、1618年に『1614-15年の日本諸王国における信仰の勝利』という著作を刊行していて、日本における宣教活動についての知識をいくらか持っていたと考えられますが、やはり極東の日本という国をどのように舞台で表現するかということになると、スペインではすでに知られていた中南米の風土を参考にするしかなかったようです。舞台は日本なのですが、インディオが登場したり、アマゾン族のような女性たちがいたり、処刑が弓矢で行われたりしていて、大河ドラマで見るような安土・桃山・江戸時代の世界とはまったく違います。西洋人が作り出したファンタジーの日本です。ロペのこの戯曲は、最も早い時期に西洋でつくられた日本のイメージを示すものとして興味深いです。

 ジャンルとしては宗教劇なのでしょうが、主人公はアロンソ・ナバレーテではなく、日本人の若者「タイコー・ソマ」です。モデルは豊臣秀頼であると推測されています。彼の人物像の原型は、中世に書かれた聖人伝『黄金伝説』に登場するインドの聖ヨサパトであり、さらにその源流をたどれば、釈迦の「四門出遊」の話であるようです。ロペが書いた『聖バルラムとホサファト』という宗教劇の主人公ホサファトと、この戯曲の主人公タイコーは、世間から隔絶した場所に閉じ込められて育った高貴な青年であるという、共通の特徴をもっています。さらに、この特徴は、のちの劇作家カルデロンの傑作『人生は夢』の主人公シヒスムンドにも受け継がれていると考えられています。アジアとスペインのつながりを考える上で、いろいろと面白い作品です。

 

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日本の殉教者たち(1) - buenaguarda

 

原文参照URL:


Los primeros mártires de Japón / Lope de Vega | Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes