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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

アマルフィ公爵夫人の執事(5/11)

『アマルフィ公爵夫人の執事』 (El mayordomo de la duquesa de Amalfi)

メランポ おまえは、まだ卵からかえってもいない赤ん坊のくせに、
 いきなり鶏になろうっていうのか?
 おまえの母親が結婚したのは40歳のときだ。そのくらいが適齢期なんだよ。
ドリスト 母ちゃんがそれを聞いたら、嘘だって言うだろうな。
メランポ おれを嘘つきよばわりするのか?
ドリスト じいちゃん、女が結婚するのは40歳じゃなくて、14歳じゃないのか?
 おれは計算してみたんだ。おれは今15歳で、母ちゃんは30歳。
 そうすると、おれを産んだとき、母ちゃんは15歳だったことになる。
 母ちゃんが40歳で結婚したなんてことはありえない。
 もしそうなら母ちゃんは今、55歳だ。
 そんなわけないだろう。まだ30歳なんだから。
 母ちゃんが15歳で結婚したんだとすれば、
 おれが15だから、つまり・・・
メランポ さすがに、もう気づいたか。
ドリスト 要するにおれが言いたいのは、
 勝手に母ちゃんを年寄りにしないでくれってことだ。
 母ちゃんの顔を見れば、だいたいの年齢はわかる。
 じいちゃんが言っているような年齢じゃない。
 とにかく、今と昔とじゃ、事情がちがうんだ。
 時代は変わったし、今は楽しみが増えた。
 じいちゃんの時代には、30歳や40歳で結婚するやつもいたかもしれない。
 だけどおれたちは、もう少し早めに結婚したいんだよ。
 女の子なんて、まだ母親の乳を飲んでいるころから
 「カレシ、カレシ」って言ってるんだぜ。
 親たちも時代の流れに乗ろうとしてるけど、
 所詮うまくいかないのさ。
 このごろの娘たちは、
 独立心が旺盛で、付き合う男は自分で選ぶんだ。
 男に選んでもらうんじゃなくてね。
 それはそうと、じいちゃん、おれの顔を見てくれ。
 もうひげも生えてる、立派な大人だ。
 おれは結婚したいんだ。理由はちゃんとある。
メランポ どんな理由だ?
ドリスト 好きな女がいるからだ。
メランポ そんなことを言って、おまえは恥ずかしくないのか?
ドリスト べつに。
アルシンド メランポ、好きな女と結婚するのは悪いことじゃないだろう。
ドリスト アルシンドさん、聞いてくれ。
 おれは、今日にでも結婚しなくちゃならない。
 じいちゃんが反対しようとも、絶対にね。
アルシンド メランポ、そう意地をはるなよ。
 この子は、もう決心を固めてるんだ。
メランポ 最悪だな。
アルシンド どうして?
メランポ こいつの家の中はめちゃめちゃになるぞ。
 こんなガキと結婚なんかしたら、
 嫁さんは後悔するだろう。おまえから言ってやってくれ。
アルシンド わかったよ。
 なあ、ドリスト。メランポは、
 おまえが結婚するにはまだ若すぎると考えているのさ。
 適当な年齢になれば、結婚してもいいだろうが、
 まだ15歳では、きっと結婚に失敗して、
 家の恥になるだろうと思っているんだ。
ドリスト 意味がわからないよ。
 失敗って、どういうことだ?
アルシンド まだおまえは、妻を満足させることができるほど、
 立派な男じゃないってことさ。
ドリスト じいちゃんは、そのことを心配しているのかい?
アルシンド そのとおり。
ドリスト だったら、おれの話を聞いてくれ。
 おれが付き合ってるのはあんたの娘だ、アルシンド
 たしかに、おれたちの家の中はめちゃくちゃかもしれないけど、
 おれはそれでも平気だよ。
 彼女は妊娠してるんだ。
アルシンド なんだって?
ドリスト ごめん。がまんできなかったんだ。
メランポ そんなことはありえない。
 その娘は、おまえと結婚させてもらうために、そんな話をでっちあげたんだろう。
ドリスト だったら来てくれよ、じいちゃん。
 彼女の姿を見たら、じいちゃんはきっとびっくりするだろうね。
アルシンド おい、二人とも!
 こんな話を聞かされるとは思わなかった。
 バルトーラは私のひとり娘なんだぞ。
メランポ 本当か?
ドリスト そうらしいね。
 ある晩、おれは町へ行く途中で彼女に会った。
 彼女を木陰に連れ込んで、ちょっとだけお互いに楽しんだ。
 そしたら、彼女が言うには、子どもができちゃったらしい。
 それで今、みんなが怒り狂ってるってわけだ。
メランポ バルトーラのやつ、殺してやる!
ドリスト 二人とも、何を言ってるんだよ?
 おれが結婚するには若すぎると言ってたくせに、
 今度は、一人前になったからだめだって言う。
 間違ったことをしたからと言って叱り、
 正しいことをしたと言って、また叱ってる。
アルシンド われわれが取るべき道はひとつしかない。世間体を保つために、
 二人を結婚させなければ。
メランポ 仕方がない。司祭を呼んできてくれ。

 アントニオと公爵夫人、質素な服装で登場。

アルシンド わかった。呼んでくる。

 アルシンド退場。

アントニオ あそこにいる農夫たちに頼んでみましょう。
 心配しないで。
 (メランポに)この道を行けば、街に着くかな?
メランポ おれの友だちが、今そっちの方へ行った。彼が案内してくれるだろう。
ドリスト 司祭を呼びに行ったんだ。
アントニオ 司祭?
 なにかおめでたいことでもあるのか?
メランポ 葬式じゃないことはたしかだ。
アントニオ それは、おめでとう。
 その人が司祭のところに着くまでに、どのくらいかかるだろう?
メランポ 一時間くらいかな。
アントニオ (公爵夫人に)私に計画があります。
公爵夫人 どんなこと?
アントニオ 司祭を、途中で待ち伏せするのです。
 私は、重傷を負って死にかけているふりをします。
 そして、私たちがまだ結婚の秘跡にあずかっていないことを告げ、
 すぐに式を執り行ってくれるように司祭に頼みます。
 そのような状況ならやむなしと判断して、
 私たちをすぐに結婚させてくれるでしょう。
公爵夫人 名案ね。
アントニオ 行きましょう。

 アントニオと公爵夫人退場。

ドリスト 誰が、おれの付添人になってくれるんだ?
メランポ おまえの叔父さんがいいだろう。
 呼んでくるついでに、おまえのいちばんいい服も持ってこい。
ドリスト 叔父さんが家にいるかどうかわからないよ。
 昨日、アマルフィ公爵夫人の執事が、叔父さんを呼びよせたらしいから。
 とにかく行ってみよう。
メランポ いればいいんだがな。
 そうすれば、叔母さんもつれてきてくれるだろうし。
ドリスト (傍白)ごめんよ、バルトーラ。
 妊娠なんかしてないのに、嘘を言ってしまって。

 

第一幕終

 

アマルフィ公爵夫人の執事(6) - buenaguarda

アマルフィ公爵夫人の執事(4) - buenaguarda