Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

アマルフィ公爵夫人の執事(3/11)

アントニオ (傍白)今日は厄日だな!
 ウルビーノに見られてしまうなんて。
ウルビーノ アントニオ!
アントニオ やあ、秘書くん。
ウルビーノ 秘書というのは、名のとおり、秘密の守り方を知っているもんだ。
 おれは、親友というのも同じようなものだと思っていたよ。
 リビアはおまえが好きらしいな。
アントニオ どうしてそう思うんだ?
ウルビーノ おまえの魅力に屈したんだろ!
アントニオ 何を言っているのかわからない。
ウルビーノ おれは、彼女がおまえに手紙を渡すのを見たんだ。
 どんな言葉が書いてあるかは、だいたい見当がつく。
アントニオ だったら、本当のことを言おう。
 リビアはとてもかわいい。
ウルビーノ おれたちが付き合っているのは、おまえも知っているくせに!
アントニオ ああ、もちろん知ってるよ。
 おまえの言いたいことはわかる。心配するな、リビアはおまえの恋人だよ。
 おまえはおれよりいい男だから、リビアはゆずる。
ウルビーノ それならいい。
 ただし、おまえがその気前の良さを悔やんでいなければの話だ。
 おれたちは親友なんだから。
 そしておれは、その手紙以外に、
 おまえたち二人の間に何もなかったのかどうか、
 知る権利がある。
アントニオ この手紙だけだよ。
ウルビーノ 他にはもらってないのか?
アントニオ ウルビーノ、おれが彼女から受け取ったのはこれっきりだ。
ウルビーノ おれにも読ませてもらいたいもんだな。
 おまえがおれとの友情を大切にするつもりなら。
アントニオ 冗談はよせ。
 今の説明でじゅうぶんだろう!
 なぜそんなに疑うんだ?おれはリビアに近づいたりしない。
ウルビーノ それなら、その手紙を破ってみろ。
 まだ開封していないようだからな。
 おまえがそうしてくれさえすれば、おれは何も言わない。
アントニオ 聞いてくれ、ウルビーノ
 おれはリビアにちょっかいは出さない。
 だけど、手紙を破るわけにはいかない。
 それは送り手に対して失礼なことだ。
 それに、おれの主義にも反する。
ウルビーノ おまえはおれの親友だと思っていたよ、アントニオ。
 だから今の頼みごとをしたんだ。
 しかし、それを拒否するなら、もうおまえは親友じゃない。
 おまえはおれを裏切ったんだ。
アントニオ ちがう。待ってくれ、ウルビーノ
ウルビーノ なんだ?
アントニオ おれたちが親友でなくなったら、
 おまえに義理立てする必要もないから、
 おれはリビアを好きになっちゃうかもしれないぞ。
ウルビーノ そんなら、そうすればいい。
 しかし、覚えておけよ。いつかおれもおまえに同じことをしてやるからな。
 おまえがおれを深く傷つけたように、おまえにも傷を負わせてやる。
アントニオ 最後まで聞けよ、ウルビーノ
 おれはおまえに、そんな仕返しはしないぞ。
 ふたりのうち、どちらかが冷静でなくなれば、
 もう一方が正しいということになるんだから。
 しかし、そうだとしても、
 おれが礼儀をわきまえた男で、おまえの親友だということを証明してやろう。
 言い争うのはやめて、この手紙の内容を分かち合おうじゃないか。
 おれが手紙を開封して、まず先に読むから、
 おまえはその後に読めばいいだろう。
 (手紙を開封し、自分の名前が書かれている部分をちぎり取る)
 すごく短い手紙だ。
 ほら、読んでみろ。
ウルビーノ 手紙をちぎったな。
アントニオ たった7文字だけだよ。
ウルビーノ 何が書いてあるんだ?
アントニオ おまえに渡したぶんの残りさ。
ウルビーノ だけど、こっちには何も書いてないぞ。
アントニオ 何も書かれていないってところに、意味があるんだろう。
 なにかの暗号だよ。わかるのはそれだけだ。
ウルビーノ アントニオ、おれをからかうのはやめてくれ!
 おまえの持っているほうには、何が書かれているんだ?
アントニオ 言っただろう?たった7文字だよ。
ウルビーノ それで全部か?
アントニオ そうだ。
ウルビーノ おまえがおれの親友なら、その言葉を教えてくれ。
アントニオ それじゃ、最後の2文字から見せよう。ほら・・・
ウルビーノ 「o」だな。
アントニオ それからこれだ。
ウルビーノ 「i」か。ほかの5文字も見せろよ。
アントニオ 5文字もだって?無茶言うなよ。
 2文字教えたんだから、それで満足しろ。
ウルビーノ 残りも教えてくれ。おまえはおれの永遠の友だ。
アントニオ 親友なら、なんでも分かちあわないとな。
 それじゃ、7文字のうちの3文字でいいだろう。
 これで半分こだ。
ウルビーノ ちくしょう、全部教えろ!
アントニオ わかった、そう怒るな。
 あと2文字見せるよ。「n」と「o」だ。
 これで、終わりの4文字がわかったろう?
ウルビーノ だけど、それは順番通りに並んでいるのか?
アントニオ さあね。解読してみろ。
ウルビーノ 残りの3文字も見せてくれ!
アントニオ それじゃ、簡単すぎる。
 (傍白)手紙には、「アントニオ(Antonio)」と書いてあった。
 つまり彼女は、私を旅に連れていくことに決めたわけだ。
 ウルビーノには4文字しか教えていないから、大丈夫だろう。
 私の名前しか書かれていないとはいえ、
 彼女の言いたいことは明白だ。
 用心しなければならないのは、
 彼女の兄たちがこれを見つけて、
 不届きなことをした罪で私を殺すかもしれないということだ。
 しかしそれでも、この恋には、命をかけるだけの価値がある。
 (ウルビーノに)またな、ウルビーノ
ウルビーノ あばよ。
 (アントニオ退場)
 おれがこの謎を解けないと思っているな。
 「オイ、ノー(o,i,n,o)」ってのはつまり、
 「今日はだめ(hoy no)」って意味だろう。
 リビアはアントニオに、今日は会えないと伝えたんだ。
 だけど、残りの3文字はなんだったんだろう?
 まてよ、「n」と「i」をひっくり返すと「o,n,i,o」になる。
 残りの3文字が「Ant」だとしたら、「アントニオ(Antonio)」だ。
 まちがいない。しかし、なぜ名前しか書かなかったんだろう?
 宛名だけ書いた手紙なんて、なんの意味もない。
 おれをいらいらさせるための悪だくみか?
 ああ、むしゃくしゃする!
 いまいましいやつらめ。おれはアントニオのすることなすことを、
 これから見張ってやる。
 あいつはおれたちの友情を裏切ったんだ。
 親友との約束を守らない男は、仕事でもあてにならない男だと、
 おれから奥様に言いつけてやろう。
 奥様があいつを信用しなくなって、首にしてくれればいい。
 しめた、奥様が来たぞ。

 公爵夫人登場。

公爵夫人 (傍白)どきどきするわ。
 私は今、アントニオに自分の気持ちをうちあけた。
 この恋が、私を破滅させませんように。
 私に死をもたらすことになりませんように。
 でも、私が彼と結婚したって、
 私の名誉を傷つけることにはならないはずよ。
 この恋には、犠牲を払うだけの価値があるわ。
 (ウルビーノに)あら、ウルビーノ。なにか用?
ウルビーノ さきほどの手紙へのお返事は書かれましたか?
公爵夫人 よく考えてみたんだけど、
 そう簡単に答えは出せないわ。
 息子はまだ幼いんだもの。
ウルビーノ フリオ様は、奥様の将来を気にしていらっしゃるのですよ。
公爵夫人 知ってるわ。
ウルビーノ ご子息のこともです。
公爵夫人 兄には、あとで返事を書くわ。
ウルビーノ フリオ様がいくら奥様を説得しようとなさっても、
 無駄だという気がいたします。
 奥様は、どんな結婚にも乗り気でいらっしゃらないのですから。
公爵夫人 だって、興味がないんですもの。
 オタービオとの結婚なんて、考えたこともないわ。
 それに、息子はまだ子どもだから、
 メディシス家の人間を父にしたいかどうかなんて、判断できないでしょう。
 私、こういう個人的なことにあまり干渉されたくないのよ。
ウルビーノ 承知いたしました。
 ところで奥様、この家で執り行われる予定の、
 もうひとつの結婚式についてお知りになりたくはありませんか?
公爵夫人 もうひとつの結婚式?
ウルビーノ お気に障りましたら、申し訳ありません。
公爵夫人 うちの召使いのうちの誰かが、
 私に知らせることもなく、結婚しようとしているっていうの?
ウルビーノ 悪い話ではありません。
 二人ともそれなりの家柄の人間ですし、
 愛しあっているようですから。
公爵夫人 それは結構なことね。誰が結婚するの?
ウルビーノ アントニオとリビアです。
公爵夫人 おまえ、その話をふたりから直接聞いたの?
ウルビーノ ええ。ふたりに会いました。
 けれどもどうか奥様、このことは内密にお願いします。
公爵夫人 わかったわ。(傍白)ここは気持ちを抑えなきゃ。
 (ウルビーノに)実際のところ、何を見たの?
ウルビーノ リビアがアントニオに、手紙を渡していたんです。
公爵夫人 それは、いつのこと?
ウルビーノ ついさっき。
公爵夫人 ありがとう、ウルビーノ。もういいわ。
ウルビーノ 奥様、お怒りにならないでください!
 このことをお伝えするのが私の務めだと思ったのです。
公爵夫人 事情はよくわかったわ。アントニオはなにも悪くありません。
ウルビーノ なぜ彼をかばうんです?
公爵夫人 おまえは恥知らずね!あっちへ行って!
 こういう知らせを持ってくるなら、ちゃんとした証拠が必要よ。
ウルビーノ 私は見たままを申し上げたのです、奥様。
 こんな秘め事は、この家に対する侮辱ではありませんか。
 悪い芽は早めに摘み取っておけば、大事にはなりません。

 

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