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Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

“騎士団長殺し”を描いたもの

作家の村上春樹氏は、最近出版された『騎士団長殺し』についてのインタビューで、「騎士団長殺しというタイトルが、まず最初にあった」と述べています。騎士団長は、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の登場人物であり、村上氏はこのオペラを聴く…

“残酷王”ペドロ1世を描いたもの

カスティーリャ王ペドロ1世(1334-69年、在位1350-69年)は、多くの王族や貴族を処刑したことから“残酷王”という異名をもっています。しかしそれは正義のために厳格さをもって臨んだ結果だとして、支持者側からは“正義王”という名もつけられました。 青池保…

派生作品

ジャック・ブランシャール 《アンジェリカとメドーロ》1630年代初め? メトロポリタン美術館 http://www.metmuseum.org/ 16世紀前半にイタリアで刊行されたアリオストによる叙事詩『狂えるオルランド』はたいへんな人気を博し、ヨーロッパ各国の文学に影響を…

田園生活の賛美

ロペはマドリードの刺繍職人の家に生まれた、典型的な都会っ子でした。彼がソネットの中で「美しきバビロン(Hermosa Babilonia)」と呼んだマドリードは、洗練された文化をもつ街であると同時に、享楽的で欺瞞に満ち、妬みや中傷が当たり前のように飛び交う…

お知らせ:翻訳中間報告・ロペのあらたな草稿発見

長らくお休みしていてすみません。『バレンシアのらんちき騒ぎ』の翻訳は、現在、第一幕まで終わりました。これから少しペースを上げようと思います。 9月中旬にマドリードに行くのですが、セルバンテス通りにある「ロペ・デ・ベガ邸宅博物館(Casa Museo Lo…

死なないロミオとジュリエット

≪カステルビン家とモンテス家≫ 2004年の上演 http://www.resad.es/estruch/castelvines.htm 『カステルビン家とモンテス家』は、ロペのコメディアの中では知名度の低い作品です。スペインでも上演されることはほとんどありません。おそらくその理由は、同じ…

バレンシアはお好き?(さいご)

せっかくなので、2012年にバレンシアで撮影してきた写真をもう少し。 カテドラルに隣接する「ミゲレテの塔」。ロペの『バレンシアのらんちき騒ぎ』の中でも言及されています。塔の上まで昇ることができます。 こちらは聖ピオ5世美術館の展示室。もともとは聖…

バレンシアはお好き?(続き)

私がバレンシアに行ったのは2012年の6月でした。バルセロナから日帰りというあわただしい滞在だったので、カテドラル(大聖堂)と聖ピオ5世美術館しか見られませんでしたが、それだけでもとても見応えがありました。次に行く機会があれば、ラ・ロンハなども…

バレンシアはお好き?

現在、『バレンシアのらんちき騒ぎ』の翻訳中です(Hiikichiさんのリクエストで)。しかしなかなか進みません…とりあえず、スペインで上演された舞台の動画をご紹介しておきます。セリフや舞台装置は現代風にアレンジされていて、ミュージカル風に出演者が歌…

男まさりの女性

ルーベンス ≪アマゾン族の戦い≫ 1618年 ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク Web Gallery of Art, image collection, virtual museum, searchable database of European fine arts (1000-1900) ロペは『当世コメディア新作法』において、女性の男装は非常に喜…

これにて、コメディアは終了

『高潔なるベリーサ』2008年上演 Las bizarrías de Belisa de Lope de Vega en el Teatro Pavón 晩年のロペは、ティルソ・デ・モリーナ、カルデロンなど次世代の劇作家の台頭により、名声を失いつつあったようです。『高潔なるベリーサ』は彼の死の前年(163…

ロペとサルスエラ

『ドニャ・フランシスキータ』の舞台(サルスエラ劇場、2010年) http://www.todosalteatro.com/6955/dona-francisquita-en-el-teatro-de-la-zarzuela-de-madrid.html ロペのコメディアには、よく歌手が登場して舞台の上で歌を披露します。本ブログで訳した…

相違の中にも慰めあり

『ロペ・デ・ベガ戯曲集第13巻』1620年 『不運の中にも慰めあり』冒頭ページ スペインの劇作家たちは、通俗的なコメディアのほか、宗教的な祝祭において上演される神秘劇なども数多く手がけました。彼らはこの時代において、カトリック教会の力を大衆に宣伝…

『オルメードの騎士』の読み方

『ロペ・デ・ベガ戯曲集第24巻』1641年 『オルメードの騎士』冒頭ページ El Cauallero de Olmedo | Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes ロペ・デ・ベガの戯曲を邦訳で読んでみよう、と思って最初に選ぶなら、私は『フエンテ・オベフーナ』とか『農場の…

ロペとドン・フアン伝説について

ティルソ・デ・モリーナ『セビーリャの色事師と石の招客』冒頭のページ 『ロペ・デ・ベガその他の著者による12の新しいコメディア集第二巻』 (1630年)より ドン・フアンといえば次々と女性を誘惑する放蕩児の代名詞となっています。実在のモデルがいたかど…

ロペと猫

『ガトマキア(猫の戦争)』 ロペ・デ・ベガ原作 エクトール・マヌエル・ビダル監督による舞台作品(ウルグアイ、2011年) Podcast: El Garagje de UNI Radio, programa 7: GATOMAQUIA : UNI Radio 『ばかなお嬢様』の中で、侍女のクララが主人のフィネアに…

登場人物の名前

ロペ・デ・ベガ『恋する才女』登場人物リスト 『ロペ・デ・ベガのコメディア集第3巻』1653年版 *ベリーサ、フェニーサ、ドリステオなど、風変わりな名前が多い。 http://www.cervantesvirtual.com/obra/la-discreta-enamorada/ ヨーロッパの人名は伝統的に…

グラシオーソ(gracioso)の役割

ロペ・デ・ベガ 『人前では愚かだけれど、本当は賢い娘』冒頭のページ (『ロペ・デ・ベガのコメディア集第21巻』1635年) *「ガラーン(galán)」「ダマ(dama)」「グラシオーソ(gracioso)」「従者あるいは侍女(criado,criada)」など、それぞれの登場…

フエンテ・オベフーナ

アントニオ・ガデス振付のバレエ 『フエンテ・オベフーナ(邦訳:アンダルシアの風)』終幕 2011年 Las grandes coreografías de Gades, en DVD - ABC.es ロペのコメディアの中でおそらく最も有名な『フエンテ・オベフーナ』は、横暴な領主に反抗するフエン…

才女の魅力

マリア・デ・サヤス 『裏切られた友情』1618-32年頃 『ばかなお嬢様』では、オタービオやラウレンシオの台詞の中に、女性教育に関する当時の男性の意見がかいま見えるところが興味深いです。 オタービオ 女なんて、もともと口がうまいんだから、 抽象的な観…

ト書きは最低限

『ロペ・デ・ベガ戯曲集第14巻』(1620年刊行)より 『バレンシアの寡婦』第一幕のページ (Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes) ロペの戯曲では、ト書きがかなり少ないです。早書きのロペにとって、いちいちト書きを書いている間が惜しかったのかもし…

Guardian Angel

スルバラン≪聖アロンソ・ロドリゲスの幻視≫(部分) 王立サン・フェルナンド美術アカデミー所蔵 次回翻訳しようと思っているのは『守護天使(La buena guarda)』です。ロペの宗教劇の代表作です。開始するのはまた数か月先になりそうですが、カトリックの国…

傑作より多作

セルバンテスが“自然の怪物”と呼んだように、ロペは黄金世紀のスペイン演劇界に君臨した巨星であり、改革者でした。書いた戯曲の数は1800篇と伝える者もあり、現存するものは350篇程度ですが、それでもシェイクスピアのおよそ10倍の数です。中には24時間で書…

文献紹介

ロペの戯曲、およびスペイン黄金世紀の演劇に関する書籍(和書)をいくつか挙げておきます。 バロック演劇名作集 (スペイン中世・黄金世紀文学選集) 作者: カルデロンデラバルカ,Calderon・de・la・Barca,岩根圀和,佐竹謙一 出版社/メーカー: 国書刊行会 発…

愛(amor)に嫉妬(celos)はつきもの

チェーザレ・リーパ『イコノロギア』(1603年)より“嫉妬(gelosia)” セバスティアン・デ・コバルビアス・イ・オロスコによって著された最初のスペイン語辞書『カスティーリャ語宝典(Tesoro de la lengua castellana o española)』 (1611年)は、この時…