Las comedias de Lope de Vega

17世紀スペインの劇作家ロペ・デ・ベガの未邦訳作品を翻訳しています。Traducciones (relativamente libres) de unas comedias de Lope ineditas en japonés. はじめての方はカテゴリー「このブログについて」からご覧ください。無断転載はお断りいたします。

最良の主人を持った黒人、サルデーニャのアンティオボ(Negro del mejor amo, Antiobo de Cerdeña, el)

ロペへの帰属:確実

執筆年代:1599-1603年

種類:宗教劇

補足:北アフリカと、イタリアのサルデーニャ島が舞台となる。最近の研究によれば、サルデーニャ守護聖人、聖アンティオコ( Antioco)の伝記に基づいて書かれたと推定される。ロペが黒人の聖人を主人公として書いた宗教劇は、ほかに『パレルモ市の聖なる黒人ロサンブーコ(El santo negro Rosambuco, de la ciudad de Palermo)』がある。

参照元ARTELOPE. Base de datos y Argumentos del teatro de Lope de Vega

Benedetta Belloni, "LOPE DE VEGA Y LA TRADICIÓN HAGIOGRÁFICA HISPANO-SARDA: SOBRE UNA FUENTE DE LA COMEDIA EL NEGRO DEL MEJOR AMO", Anuario de Lope de Vega, Vol. 25, 2019(https://doi.org/10.5565/rev/anuariolopedevega.302

 

 アルジェの王子アルマンソールは、父の死によって国王の座につく。廷臣のピロと、アルマンソールの妻ペルシダは、慣習に従って弟のドゥリマーンを殺すよう彼に忠告する。それによって彼の王権が確かなものになるからである。

 

 アルマンソールはためらうが、最終的に彼らに説得され、ドゥリマーンを殺すようピロに命じる。

 

 ドゥリマーンと彼の妹アルラーハは、自分たちの命が脅かされていることを察知する。ピロがドゥリマーンを殺しに来るが、アルラーハは自分のマントの下にドゥリマーンを隠す。アルラーハを愛しているピロは、ドゥリマーンが隠れていることに気づくが、アルラーハの嘆願を聞き入れてドゥリマーンを逃がす。

 

  エチオピアの王アウフリードにはソフォニスバという美しい娘がいる。彼らの前に、ドゥリマーンが現れる。ドゥリマーンは自分の身分を明かし、アルマンソールに追われていることを話す。リビアと戦争をしていたアウフリードは、ドゥリマーンを保護し、彼の力を借りて戦争に勝利しようと意気込む。ドゥリマーンとソフォニスバは互いに好意を持つ。

 

 アルジェではアルラーハとピロが、共謀してアルマンソールを殺す計画を立てる。アルマンソールはピロの妹ロヘラーナに恋しており、彼女との仲を取り持ってほしいとアルラーハに頼む。アルラーハはそれを暗殺の好機だととらえる。

 

 エチオピアリビアとの戦争に勝利する。アウフリードはドゥリマーンの功績をたたえ、ソフォニスバと彼を結婚させる。

 

 ピロはロヘラーナに変装してアルマンソールに近づき、彼を殺す。ピロは逃亡し、その後ドゥリマーンの家臣になる。

 

  20年が経過する。ドゥリマーンとソフォニスバの間に生まれた王子アンティオボは、キリスト教徒の捕虜を助けることに喜びを感じていた。

 

 アンティオボの乳兄弟アリは、イタリアのサルデーニャ島で捕らえたキリスト教徒の女性ルシンダを奴隷として売る。それを見たアンティオボはルシンダを買い取って自由の身にする。アンティオボはルシンダが持っていたロザリオを求め、自分のために聖母マリアに祈っておいてほしいと彼女に頼む。

 

 続いてアンティオボは、年老いたキリスト教徒の捕虜コンスタンシオを労役から解放する。コンスタンシオは彼に「私の妹マルセーラはあなたの乳母でした。彼女はあなたにひそかに洗礼を受けさせたため、ドゥリマーン王によって牢獄に幽閉され、20年たった今もそこにいます」と告げる。

 

 その頃、トルコの皇帝サルデーニャを占領しようと、島を包囲していた。そのことを知ったドゥリマーンとピロはトルコへ援軍を送ろうと考え、アンティオボに軍を任せることにする。

 

 アンティオボとコンスタンシオは、幽閉されているマルセーラのもとを訪ねる。マルセーラは兄との再会を果たした後、息を引き取る。

 

 サルデーニャの民衆は教会に集まり、トルコ軍を撃退しようと誓う。「三王礼拝」の祭壇画の前で彼らが聖母マリアとキリストの加護を願うと、天から「(私と)同じ肌の色の指導者を助けよう」という声が響き、祭壇画の中に描かれている黒人の王が腕を挙げる。

 

 サルデーニャの民衆は、この奇跡的な出来事に勇気づけられる。彼らはトルコ軍に立ち向かおうと海岸へ向かう。

 

 サルデーニャに到着したアンティオボは、父の命令に背き、廷臣のアルミンドの忠告にも逆らって、トルコの皇帝の使者にキリスト教徒たちを解放するよう要求する。さらに彼はアリに、キリスト教徒たちに武器を与えるよう命じる。

 

 アンティオボは解放されたキリスト教徒たちの前で、自分もまたキリスト教徒であると宣言する。彼はトルコ軍の船を奪い、勝利するための作戦を彼らに教える。

 

 キリスト教徒たちは、トルコ軍の兵士たちが上陸し、船が空になった隙を狙って船を奪う。遠方からその様子を見ていたトルコの皇帝は驚き、アンティオボに説明を求める。アンティオボは自分がキリスト教の信仰を持っていることを表明する。

 

 アンティオボは、皇帝が息子たちを人質として差し出すことを条件に、彼に船と軍隊を返還する。トルコ軍が退却したのち、アンティオボは皇帝の息子たちをトルコに帰す。

 

 サルデーニャの民衆は、アンティオボに国王になってほしいと望む。しかしアンティオボはあらゆる栄誉を拒み、コンスタンシオ、アリとともに洞窟の中で隠者として暮らすことを選ぶ。

 

 コンスタンシオが死に、アンティオボとアリは悲しむ。アンティオボは聖者として人々にあがめられるようになる。

 

 羊飼いの娘ドリダはアンティオボに激しく恋焦がれる。彼女はアンティオボに向かって「私の病気を治すために、私の胸に手を当ててください」と頼む。アンティオボが言われた通りにすると、ドリダは気を失って倒れる。

 

 その後、アンティオボは羊飼いたちから頼まれて、狂気に陥った羊飼いリドニオの中から悪魔を追い出す。リドニオは、悪魔がドリダの恋心を使ってアンティオボを誘惑しようと企んでいたことを告白する。

 

 アンティオボは、「いつ、人生という牢獄から私は解放されるのでしょうか」と神に問いかける。すると「今」という声が響く。

 

 羊飼いたちがアンティオボのもとへ行くと、彼は立ったまま恍惚としていた。天上の音楽が響き、薔薇の花が地上に舞い落ちる中、羊飼いたちはアンティオボの神秘的な死を目撃する。

 

 羊飼いたちは、アンティオボの遺体に向かって「トルコ軍がまた攻めてくる恐れはありますか」と問う。すると遺体は首を振る。羊飼いたちは喜び、アンティオボを礼賛する。

 

 ナポリ出身のドニャ・フアナという裕福な婦人が、アンティオボの評判を聞き、彼に会おうとサルデーニャにやってくる。しかし彼女はアリから、アンティオボがすでに死んだことを知らされる。

 

 アンティオボの遺体は奇跡的に腐敗せず残っており、フアナはその遺体を見たいと望む。アンティオボの遺体が片手を上げているのを見たフアナは、指輪をその指にはめる。しかし遺体は指輪を地に落とし、受け取りを拒否する。

 

 フアナが去った後、息子の裏切りに報復しようと考えたドゥリマーンの海軍がサルデーニャに到着する。キリスト教徒たちはアンティオボに祈る。するとアンティオボの遺体が岩の上から地上に降り立つ。イスラム教徒たちは恐れて逃げ出す。

 

 ドゥリマーンの軍が去り、キリスト教徒たちがアンティオボを崇めようとすると、遺体は元の場所に戻り、疲労した表情で、手を下に降ろしていた。

 

 巡礼者姿のフアナが現れる。彼女は過去の罪を償うため、自分の財産でアンティオボにささげる修道院を建設し、自らも修道女となることを宣言する。するとアンティオボの遺体が、フアナのために指を挙げる。フアナがその指に再び指輪をはめて幕となる。

 

 

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